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エウベルと植中が退き、喜田拓也を中心に左に渡辺皓、右に山根の3人がボランチに入り、前線はにアンデルソン・ロペスと宮市亮のツートップの形となった。
数的優位に立った山東は、当然さらに攻勢を強める。
ただ、ラウンド16の川崎フロンターレ戦で驚異的な攻撃力を発揮していたクリザンが不調だったこともあり、山東はなかなかシュートを枠内に飛ばせない。クリザンは1週間前に行われた横浜FMとのファーストレグでは欠場しており、本調子とは程遠かったのだろう。
そして、一方的に押し込まれたかに見えた横浜FMは、カウンターからビッグチャンスを何度か作ることに成功した。
52分にはGKのポープ・ウィリアムからのボールを受けたアンデルソン・ロペスがフリーで抜け出してシュートし(王大雷が足でブロック)、その2分後にも前線で宮市がつないでアンデルソン・ロペスが再びフリーで抜け出して枠内にシュート(王大雷が触ってCK)。65分には、オフサイドを取られたものの、右サイドバックの松原健からのボールで宮市が抜け出す場面もあった。
そして、数的優位に立ちながら得点できない山東の選手たちには次第に疲労の色と苛立ちが目立ち始め、選手同士でやり合う場面も出てきた。
そして、迎えた75分、右サイドで松原から宮市につながり、宮市が落ち着いて戻したボールに山根がからみ、山根のクロスをファーサイドで待っていたアンデルソン・ロペスがボレーシュートを決めて横浜FMがリードを奪って、勝利に大きく近づいた。
11人で戦っていた時には攻撃が十分に機能しなかった横浜FM。あのまま11人同士で戦っていたら敗れていた可能性も高いだろう。だが、1人減ったことでカウンターに徹したことが勝利につながった。
横浜FMには、せっかく前線に俊足アタッカーが揃っているのだから、Jリーグでの戦いでもこうしたカウンターの形は使えるのではないだろうか?
もちろん、山東には攻撃に出た時にDFラインの裏やサイドに大きなスペースを作ってしまうという悪い癖がある。しかも、ファーストレグで敗れていた山東はゴールを決められなければ敗退となってしまうために、攻撃の意識が非常に高くなっていた。
Jリーグのクラブは相手のカウンターに対してもしっかりと対策を講じてくるから、Jリーグでは山東戦のように簡単にカウンターが決まることはないだろう。しかし、試合の流れによっては、あるいは相手の守備陣が消耗した後半には俊足アタッカーを生かすカウンターの形をトライしてみる価値はあるのではないか。
永戸の退場が思わぬ効果を発揮して、横浜FMは準決勝進出以上のものを手にしたのかもしれない。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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