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5試合連続フル出場の久保
久保建英がまた先発フル出場した。これでアジアカップから戻って来て5試合連続である。
アトレティコ・マドリーと並んで唯一、3つのコンペティションーーラ・リーガ、CL、コパ・デルレイーーで生き残っているソシエダは、3日に1試合ペースの過酷日程が続いている。主力のル・ノルマン、スベルディア、メリーノ、ブライス・メンデスも代わる代わる休んでいるが、久保とスビメンディだけはフル出場。ともに代えが利かないからだ。
久保は単独で打開する力、スビメンディは中盤の底でのキープとボール出しと守備で傑出しており代役がいない。先々週のパリ・サンジェルマン戦第1レグは一回り違う個人能力の差で敗れた(2-0)が、この2人だけは相手と遜色ないレベルだった。
ボールが渡ると必ず何かをやってくれるから、ここぞという場面では誰もが久保を探している。ただ、それは彼に助けを求める、というよりも、持ち味が出るような形をみんなでお膳立てして、“さあ、思いっ切り技を出してください”とボールを渡す、という感じだ。「持ち味が出る形」とは、足下にパスをもらえるスペースと余裕がある、マーカーとの1対1。深さはペナルティエリアからちょっと外に出た辺りが良い。
ここからなら、【1】対角に押し込んでから左に切り返しての左足のシュート。【2】同じ状態からの左足のセンタリング。このセンタリングはファーポスト側を巻いて落ちて行くので、ファーへ走り込め、という約束事が仲間に浸透している。【3】縦へ抜けての右足での速いセンタリング兼シュート。こちらは味方に当たっても敵に当たってもゴールになる、“事故を起こすための”もの。【4】縦へ向けての右足での浮かしたセンタリング。これもファーポストへの仲間の走り込みを期待してのものだ。
【2】と【3】と【4】は1対2の数的不利でも出すことができている。
昨季までの久保と言えば、【1】のイメージだったがーー先々週のマジョルカ戦でのゴールの乾いた強烈な弾道は凄かったがーー、今季の特にここ最近はセンタリングの質と右足のキックの精度が上がったことで、【2】も【3】も【4】もと幅が広がり、仲間にとってはより頼りになる、相手にとってはより対策しにくい選手へと変身しつつある。
もう一つ、向上したのは何と言っても体力。連続フル出場の疲れがまったく見えない(これはスビメンディもそう)。終了間際でも股抜きをしたり、フェイント&ダッシュで一瞬でマークを外すプレーからは、かつて65分くらいで肩で息をし最初の交代要員の常連だった頃が嘘のようだ。
考えてみれば、久保が攻撃面のMVPなのは、昨季終盤からずっとそうである。だが、その中でも着実にステップアップを続けている。
文/木村浩嗣
木村浩嗣
編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。
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