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サッカー フットサル コラム 2024年2月20日

鬱を告白したルイス・スアレス。サッカー選手を襲う過激なプレッシャー

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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鬱を告白したアルメリアのルイス・スアレス

アルメリアが不名誉なリーガ記録を作った。

先週末のグラナダ戦に引き分けて、28節連続未勝利となったのだ。今季だけに限ると25節勝ち星なしの勝ち点8で当然の最下位。5大リーグで唯一の未勝利のチームでもある。残留圏の17位セルタとの差が12ポイントでは降格確実を言わざるを得ない。

スポーツだから勝てないこともあるのが当然なのだが、先月、『マルカ』紙のインタビューで鬱を告白したルイス・スアレスがいるので、アルメリアのことが気に掛かっている。ルイス・スアレスといえば19-20サラゴサ時代に香川真司のアシストでゴールを量産したので、覚えている日本のファンもいるかもしれない。

今季は開幕から好調で10試合で4ゴールした後大ケガを負い、前述のインタビュー後に復帰したのだが、ケガの再発で今季絶望となってしまった。インタビューによると、勝てないチームと苦しむチームメイトを助けられないことで持病だった鬱が悪化したとのことだったが、今の彼の心境を想像すると辛いものがある。

アルメリアはそれほど悪いチームではない。先日『リーグの権威を失墜させかねない誤審』で書いたようにレアル・マドリー相手にも大健闘している。だが、サッカーは心理状態が決定的な影響を及ぼす。だからこそ、今はどのチームでも心理カウンセラーや精神科医をスタッフに加えている。「また勝てない」と思って戦うとやはり勝てない。結果の悪化が選手の自信を喪失させ、さらに結果を悪化させるという悪循環が、不名誉な記録の裏にあるのだと思う。CLのレアル・マドリーは時に信じられないような逆転劇を連発する。あれと逆のことがアルメリアに起きているのだろう。

プロサッカー選手が鬱を告白することは珍しくなくなった。

かつては、イニエスタがそうだったように、引退後や一線を退いた後(イニエスタの場合はバルセロナを離れた後)に「実はあの時……」と振り返ることが多かったが、最近では現役選手が告白することが増えている。今季だけでも、ルイス・スアレスに加え、久保建英の同僚アレックス・レミロやボルハ・イグレシアス(元ベティス)の名が挙げることができる。

若くして大金を稼ぎ強靭なアスリートであるサッカー選手はスーパーマンのように見られるが実はそうではなく、人気者ゆえのプレッシャーにもさらされている。チームや自分が不振に陥ると、家を出られない、とルイス・スアレスが言っていた。

私も鬱を患った。散歩による気分転換は治療の一環だった。それが許されないアルメリアの選手たち、ましてやケガの再発と手術を経験したルイス・スアレスを応援せざるを得ない。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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