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サッカー フットサル コラム 2023年12月25日

グレイザーがユナイテッドから完全に撤退するわけではない

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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ラトクリフ卿はユナイテッド・サポーターであり、スポーツビジネスにも精通する実業家だ

ラトクリフ卿はユナイテッド・サポーターであり、スポーツビジネスにも精通する実業家だ

情けないったらありゃしない!

ポジティヴな要素が見当たらないまま、マンチェスター・ユナイテッドは2023/24シーズンを折り返そうとしている。

見るも無残な状況だ。9勝1分8敗。8敗!? いくらなんでも負けすぎだ。序盤戦は気ミスキャッチを繰り返したアンドレ・オナナ、ラインを上げられないハリー・マグワイア、ビルドアップにはほとんど貢献できないスコット・マクトミネイ、ボールを奪われても無関心のマーカス・ラシュフォード、アンソニー・マルシャル……。個人的に責められてしかるべき選手も数人いる。

また、リサンドロ・マルティネス、ラファエル・ヴァラン、ルーク・ショー、カゼミロ、クリスティアン・エリクセンなど、主力のケガ人も多すぎた。18節終了まで、首脳陣やサポーターの期待に応えているのはブルーノ・フェルナンデスただひとりである。

「ユナイテッドなんかどこがいいんだよ」

辛辣な声も聞こえてくる。ジョゼップ・グアルディオラ監督就任後、マンチェスター・シティに魅入られたり、ユルゲン・クロップ監督着任と同時にリヴァプールを支持されたりした若いファンの皆さんはお分かりにならないだろう。

冨安健洋の加入でアーセナル・サポーターになった方、三笘薫とともにブライトンに熱狂する方にもご理解いただけないはずだ。

彼らにすれば、ユナイテッドは「4位に入れば御の字」程度のクラブなのだ。

しかし、ほんの10年前まではプレミアリーグといえば、マンチェスター・ユナイテッドだった。シティとチェルシーが新興勢力として台頭してきたものの、歴史も伝統も薄い。アーセナルとリヴァプールは脇役でしかなく、ブライトンは実質2部のチャンピオンシップをさまよっていた。

ユナイテッド凋落の要因は、ひとえにグレイザー・ファミリーの愚策である。エドワード・ウッドワードやジョン・マータフ、リチャールド・アーノルドといった素人を要職に起用。その結果、移籍市場に巨額を投下しながら、大半が失敗に終わっている。

しかも、昨年11月にクラブ売却を明言して以降、交渉は遅々として進まなかった。12月24日、ジム・ラトクリフ卿が率いる『INEOS』が株式の25%を買い取り、フットボール部門を統括するプランがようやくまとまったとはいえ、グレイザー・ファミリーがユナイテッドから完全に撤退するわけではない。営業面は彼らの領域だ。

アメリカ人オーナーにとって、ユナイテッドは単なる投資にすぎない。タイトル獲得は二の次で、大企業とのタイアップやコマーシャル契約で大金を得られればノープロブレム、と考えている。これでは他クラブに追い越され、その差が大きくなるのは当然だ。

サー・アレックス・ファーガソン退任後、デイヴィッド・モイーズ、ルイ・ファン・ハール、ジョゼ・モウリーニョ、オーレ・グンナー・スールシャール、ラルフ・ラングニック(暫定体制)と、タイプの異なる指揮官を次々と起用。現場に混乱を招いたのもグレイザー・ファミリーが信頼していたウッドワードとマータフ、アーノルドの失敗だ。彼らはフットボール業界に良好な関係を作れなかった。

もちろん、エリク・テンハフ現監督にも責任はある。就任後2シーズン目を迎えても、明確なゲームプランを構築できていない。アヤックスで同じ釜の飯を食ったアントニーを辛抱強く使いながら(18節のウェストハム戦で深手を負った)、遅刻癖は治らないジェイドン・サンチョを過度に干したり、ファクンド・ペリストリにチャンスを与えなかったり、アンフェアとも感じられる人選には批判が集中している。

ただ、真剣に強化してこなかったグレイザー・ファミリーこそが諸悪の根源だ。前半戦の不調も、彼らがオーナーとしての責務を怠ってきた永い時代の代償といって差し支えない。一刻も早く、フットボール部門から手を引きやがれ!

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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