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シンビンには消極的なテリー。現役当時の彼は勝負に徹し、乱闘も辞さないタイプのCBだった
考え方を変えるのは難しい。
読売ジャイアンツの原辰徳前監督が「セリーグにも指名打者制を」と訴えたとき、少なからぬ反発を招いたと伝えられている。
江戸時代末期、廃刀令が下った武士たちはどのような心境だったのだろうか。
下北沢の開かずの踏切が撤廃された瞬間、筆者は生まれ育った街の景観が損なわれる怒りと悲しみに苛まれた。
また、とあるメディアはインター・ミラノからインテル・ミラノに、アストンヴィラなどで活躍したマーク・デラニーをマーク・ディレイニーに表記を改めるとき、信じられないほどの抵抗があったという。そういえばスペイン語は20年以上も前から、ウ濁点の発音が消えているらしい。
『IFAB』(国際フットボール評議会)が、“シンビン” の導入を検討している。レフェリーに激しく異議を唱えた者が対象となり、将来的に退場には値しないが、そのままプレー続行はいかがなものかと考えられるファウルにも適用する構えだ。
「わざわざルール変更するまでもない。現状のままでいい」
かつてチェルシーのキャプテンを務めたジョン・テリーは、シンビンに消極的だった。現役当時の彼は、決してクリーンなセンターバックではなかった。勝利のためなら、レッドカードを突きつけられない程度のファウルでチームを救っていた。成功体験をふまえ、新ルールはお気に召さないということか。
ただ、一対一で後れをとった選手がボールを取り返そうともせず、いわゆる “戦術的ファウル” で抑えるシーンは見ていて不快だ。現状のルールではゴールに直結しないかぎり、警告の対象でしかない。ファウルを犯した選手、クラブのダメージは限定的だ。
ボールにチャレンジする意図がまったくなく、それほど暴力的ではないプレーも、マイナーペナルティーとして取り締まるべきだ。
リヴァプールのユルゲン・クロップ、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ両監督が口を酸っぱくして語る「選手を守ってほしい」は、過密すぎる日程だけではない。
エヴァートンのジョーン・ダイシ監督も「現状のルールで問題ない」としながら、次のようにも語っていた。
「わたしはあくまでも監督の立場でコメントしている。でも、ファンの皆さんは違う意見かもしれない」
VARが機能せず、一貫性に欠けるレフェリーの裁定が問題視される(マンチェスター・シティ対トッテナム戦の主審を務めたサイモン・フーパーは、一度アドヴァンテージを促しながら……)いま、新ルールの導入はさらなる混乱を招く。だが、戦術的ファウルを厳しく取り締まる策だけは考えた方がいい。
退場は厳しすぎるものの、警告と5~10分の退場。ラグビーやアイスホッケーのルールを採り入れてもいいのではないだろうか。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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