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試合開始5分、クラウディオ・エチェベリがFKからの先制点
「善戦しても、負けては意味がない」という言葉がある。フル代表(A代表)のタイトルマッチだったら、それこそが真実であろう。
だが、育成年代のU-17代表の試合であれば、2点を先制された後、アルゼンチンを追い詰めた“善戦”には大きな意味があるのではないか。
バンドンのシ・ジャラク・ハルパト・スタジアムには1万2324人の観衆が詰めかけたが、インドネシア人観客の大半は、前半はアルゼンチンに声援を送り続けた。
ところが、後半に入ると積極的にボールを動かした日本が優勢となり、50分に1点返す。右サイドをサイドバックの柴田翔太郎がドリブルで突破。ペナルティーエリアに入ってから入れたクロスに高岡伶颯が詰めて1点差とした日本代表。その後もパスを回したり、あるいはドリブル突破を試みたりしてアルゼンチンを押し込んだ(アルゼンチンのディエゴ・プラセンテ監督も「引き分けでもおかしくない試合」と認めた)。
すると、アルゼンチンが時間稼ぎをする場面や、反則で止めたような場面では前半とは打って変わってインドネシア人の観客はアルゼンチンに対してブーイングを浴びせかけた。
つまり、前半と後半とではまったく違う展開の試合となったのである。
立ち上がりの2失点が響いて敗れはしたものの、日本が善戦したことは事実。2点ビハインドから同点を目指してアルゼンチン相手に果敢に攻撃を続けたことは大きな自信としていいだろう。佐藤龍之介のドリブルはアルゼンチンのDFで求められなかったし、山本丈偉と中島洋太郎のボランチはパスでアルゼンチンの守備を揺さぶった……。
また、後半だけを見れば、球際での勝負でも日本の選手はアルゼンチンにけっして負けてはいなかった。
ただ、試合が1対3の敗戦に終わったのも事実。8分までに2失点。これが大きくのしかかってくる試合となった。
初戦でセネガルに敗れたアルゼンチンとしては、日本戦はどうしても勝たなければいけない試合だった。
そのため、彼らはセネガル戦の反省を生かして、前半の立ち上がりに勝負を懸けてきた。
セネガル戦では、日本戦とは反対にアルゼンチンは前半の6分に失点して苦しい展開になってしまったからだ。
セネガル戦でもサンティアゴ・ロペスやクラウディオ・エチェベリのアルゼンチン・スタイルのドリブル(ボールタッチ数の多いドリブル)は見事なものだったが、攻撃は遅かった。パスを受けてボールを止めてからドリブルに移るような、クラシカルなスタイルだったからだ。
しかし、日本戦ではアルゼンチンがスピードのある攻めを仕掛けてきた。
そして、開始からわずかに4分。右サイドバックのディラン・ゴロシートがエチェベリにパスを通すとエチェベリが倒されてアルゼンチンはゴール正面でFKを獲得する。エチェベリはセネガル戦では絶好の位置のFKを3本も外してしまっていたが、日本戦では正面のFKを見事に右隅に沈めてきた。
あらゆる意味で、アルゼンチンは(前半20分までのアルゼンチンは)セネガル戦のアルゼンチンとはまったく違っていた。
日本の選手たちは、アルゼンチンのパス回しに対して前線から積極的にプレスをかけようとした。だが、アルゼンチンが個人技とスピードで日本選手のアタックを交わして、日本のゴールに迫ってきた。
相手がキックオフ直後からフルパワーで来た場合には、無理に前線からボール奪いに行くと交わされてしまう。相手がそういう戦い方をしてきたのなら、守備のやり方を調整すべきところだ。無理にボールを奪うのではなく、しっかりとスペースを消すような守り方で、相手の攻撃がスローダウンするのを待つべきだった。
たとえば、森保一監督が率いるフル代表の経験豊富な選手たちだったら、相手の出方を見て瞬時に守り方を変えることができる。
しかし、試合経験が少ない17歳以下の選手にとって、それは難しいことだったようで、日本の選手たちは前線からのボール奪取を試み続けてしまったのだ。
実際、アルゼンチンの猛攻はその後は続かなかった。それを90分間続けることが不可能なことはアルゼンチン選手自身がよく分かっていたのだろう。2点をリードすると、アルゼンチンはゲームを落ち着かせようとしたのだ。
日本としては相手のスローダウンに救われた形だった。最終ラインを突破することはできなかったものの、前半の途中からは日本がボールを回す時間も増えていった。そして、ある程度の手ごたえを感じてハーフタイムを迎えることができたのだ。
ずばり、敗因は立ち上がりの試合運びの拙さだった。
だが、17歳以下の選手にそこまでは求められないだろう。勝敗の行方を決めるのは、テクニックや戦術だけではない。試合運び、あるいは試合の入り方のような部分の差によって勝敗が決してしまうこともある。そのことを、このアルゼンチン戦から学んでもらいたい。
それを経験することこそがU-17ワールドカップ出場の目的なのだ。アルゼンチンにしてやられた部分と逆にアルゼンチン相手にも通用した部分をしっかりと考えて将来につなげていってほしいものだ。
もっとも、大会はまだ続いている。1勝1敗となった日本は、セネガルとの最終戦に勝利すれば、グループリーグ突破はほぼ確実になるだろう。引き分けて勝点4の3位で終えても「3位通過」の可能性は大きい。今大会、引き分けがほとんどないので、多くの組の3位は勝点3となりそうだからだ。
しかし、初戦でアルゼンチンに勝利し、2戦目はポーランドに4対1と圧勝したセネガルは強敵だ。
15歳ですでにフル代表経験があり、17歳以下の代表のキャプテンまで務めているアマラ・ディウフをはじめ、身体能力を生かしたスピードスターが並んでいるのだ。アルゼンチンのスピード・サッカーはわずか20分で終わってしまったが、セネガルはスピードある攻めを90分間続けることができる。
日本のDFがこれを止めるのは容易なことではないが、勝敗の行方はそこに懸かっている。
セネガルは中盤のアンカーにダウーダ・ディオンという大型の選手がおり、ディフェンススクリーンとしてチームに大きく貢献している。ここをうまく突破さえできれば、最終ラインの守備の連係には問題がありそうだし、攻撃的ポジションの選手は守備が苦手そうだ。
セネガルの攻撃をうまく抑えられれば、得点はできるのではないだろうか。ラウンド16進出を目指して、最後まで積極的な戦いを期待したい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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