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ウォード=プラウズのプレースキックは正確無比。まさしく “銭の取れる” プレーだ
別に横並びじゃなくたっていいじゃんか──。
近ごろ息苦しくなってきた。個性は突出したものと誤解され、他人と違う感覚は良くない傾向とされている。多様性を叫びながら、組織のなかにせっかくのパーソナリティを埋めこもうとしている。
フットボールの基本的ゲームプランもポゼッション、トラジションが正義、トレンドで、ロングカウンターは時代後れ、アンティークとも考えられている。
狭すぎはしないか。ありとあらゆるチームがポゼッションを基本戦略に用いると、退屈した試合になる公算が大きい。水と油が化学反応を起こすからこそ新しい世界を創造し、人々は興奮する。
ジョゼップ・グアルディオラ(当時バルセロナ)対ジョゼ・モウリーニョ(当時レアル・マドリー)、サー・アレックス・ファーガソン(当時マンチェスター・ユナイテッド)対アルセーヌ・ヴェンゲル(当時アーセナル)が盛りあがったのは、方向性が違うチーム同士の闘いだったからだ。もちろん、サー・アレックスとモウリーニョがヒールを買って出たことも人気沸騰の一因である。
アントニオ猪木対タイガー・ジェット・シン。ジャイアント馬場対アブドゥーラ・ザ・ブッチャー。対決の構図とはそういうものだ。
決して憎々しいヒールではない。かわいげのあるおじさんだ。サー・アレックスやモウリーニョのように口八丁手八丁ではなく、対戦相手を罵倒しない。タイトル歴も寂しい限りで、昨シーンのカンファレンスリーグが唯一の栄冠だ。
デイヴィッド・モイーズである。
筆者はこの男に好印象を抱いていない。サー・アレックスが勇退した2013年夏、どういう経緯かわからないがユナイテッドの新監督に就任した。グアルディオラ、モウリーニョ、カルロ・アンチェロッティ、ユルゲン・クロップなど、多くの名将が新監督候補に挙げられたにもかかわらず、なぜかモイーズがユナイテッドのボスになり、世界に冠たる名門をブチ壊した。
昨日と今日、午前と午後で指導内容が変わるため、だれひとりとしてモイーズについていかなかった。九か月で解任。その後、サンダーランド、レアル・ソソエダでもうまくいかず、17年12月に着任したウェストハムでも、3バックが上下動するだけの古臭い戦術で少なからぬ批判を浴びた。シーズン終了後に解任。モイーズのキャリアは終わったかにも思われたのだが……。
19年12月、マヌエル・ペレグリーニが解雇されると、ウェストハム上層部はサポーターの大反対を押し切ってモイーズを再招集。ここから、まさかのリベンジが始まった。
冬の市場で獲得したトマス・ソーチェク、ジャロッド・ボウェンがものの見事にはまり、なおかつミカエル・アントニオの “規格外フィジカル” でプレミアリーグに残留した。翌シーズンからはアーロン・クレスウェルの左足、スピードと技巧のボウェンに加え、ワールドクラスのアンカーに成長したデクラン・ライスが異彩を放ち、2シーズン連続でトップ8を維持している。
ローテーションを活用できなかった昨シーズンこそ16位に沈んだものの、カンファレンスリーグでは優勝。1979‐80シーズンのFAカップ以来43年ぶりの戴冠に、ハマーズ・サポーターは留飲を下げたのである。
そして今シーズン、ライスがアーセナルに移籍したとはいえ、リーグ随一のセットプレー・アーティストといって差し支えないジェイムズ・ウォード=プラウズをサウサンプトンから獲得し、ソーチェク、アントニオをはじめとするストロングヘッダーの威力が倍増、いや、三倍増した感がある。
マイボールになった瞬間、鬼気迫るスプリントを繰り返すボウェン、ルーカス・パケタには勝利への執念が熱く感じられる。
最終ラインの選手層がやや薄いため、マンチェスター・シティやアーセナル、リヴァプールと優勝争いを演じられるとは思えない。チャンピオンズリーグの出場権獲得も難しい。だが、セットプレーとロングカウンターに磨きがかかった今シーズンのウェストハムは、非常に厄介なチームになりつつある。
プレミアリーグに “鉄槌” を振り下ろせ!
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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