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サッカー フットサル コラム 2023年10月10日

代表選手の愛国心だって人それぞれ、国とは寛容で多様な感情が混在する「箱」のようなもの

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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ジョセップ・グアルディオラ

ジョセップ・グアルディオラ監督

「グアルディオラにはスペイン国旗にキスを強制するべきだ」

こんなアルフォンソ──元ベティスのレジェンド、アルフォンソ・ペレス──の発言が物議を醸している。代表でプレーするなら国旗に忠誠を誓うべきだ、というのだ。

アルフォンソは保守的な考え方の持ち主で、この言葉や女子サッカーへのコメントが問題視されてヘタフェのホームスタジアムが「コリセウム・アルフォンソ・ペレス」から、ただの「コリセウム」に改名されてしまった。

国旗へのキスというと前時代的に響くかもしれないが、スペインの軍隊学校では今も行われていて、兵役中のレオノール王女が先週末キスをしたばかり。国を愛し忠誠を尽くせない者に国防は任せられない、というわけだ。だが、国旗へのキスができない者にスペイン代表の名誉を託すわけにはいけないだろうか?

グアルディオラが引き合いに出されているのは「私が愛し所属し感じている国はカタルーニャだ」と明言しているから。グラディオラは47試合でスペイン代表のユニフォームを着ている。なのに、スペインからの独立を願うカタルーニャへの愛を誓っている。これが、かつての代表の同僚、保守的なアルフォンソからすれば気に入らないわけだ。アルフォンソの筋が通らないとか納得できないという気持ちはわかる。

だが、移民の子ジダンが旧宗主国を称える歌、フランス国歌を歌わなかったというのは有名な話だ。サッカーをするだけなら国旗へのキスや国歌斉唱レベルの忠誠を求めなくても良いのではないか。

選手も含めて多くの人にとって自分の国とは、寛容で多様な感情が混在する「箱」のようなものではないかと思う。良い点もあるが悪い点もある。好きな部分もあるが嫌いな部分もある。だけどやっぱり好きとか、住みやすいとか、外国に行くと懐かしくなるとか、そんな場所のこと。だから、グアルディオラがスペインは好きではないがスペイン内のカタルーニャが好きとか、ジダンが国歌は気に食わないが家族も含め一番居心地が良いのはフランス、というのはありだと思う。

そして、そんなスペイン、フランスのためにプレーして勝ちたい、というので十分代表のシャツに袖を通す資格がある、と個人的には思う。

みなさんはどう思いますか?

もっとも、グアルディオラが今の強い気持ちを選手時代に抱いていれば代表を辞退していたかもしれない。

彼が政治的にラディカルになったのは引退後。そしてスペイン社会もまたラディカルになった。独立派と反独立派の対立、フェミニズムとマチズムの対立、移民と先住民との対立、国境を挟む近隣との対立、持てる者と持たざる者の対立……。ここ数年、緊張感が高まり空気がトゲトゲしくなっているのは、格差拡大などで社会全般が貧しくなり人々が余裕を失ったからだろう。

そんな中でサッカーが娯楽となり得るためにはユルイ方がいい。やる方もやらせる方も見ている方も。

なので、カタルーニャ愛国者グアルディオラにも「スペイン政府は気に食わないし、圧政の象徴である国旗にキスなんてできないが、スペインの人は好きなので」なんて気楽に普通に代表を応援してくれればな、と夢見ていたりするのだ。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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