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サッカー フットサル コラム 2023年9月13日

マリナキスはフォレストの実状を無視して乱獲を繰り返す

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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ブレナン・ジョンソン

スピード豊かなドリブルが持ち味のジョンソンはトッテナムに移籍。フォレストの攻撃力は低下するに違いない

勝つために手段を選ばないブライアン・クラフ監督が率いていた当時、ノッティンガム・フォレストはチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)を連覇している。

1978-79シーズン、超守備的なマルメを1-0で下し、ヨーロッパを制した。しかし、フォレストも攻撃に工夫がない。トレヴァー・フランシスやトニー・ウドコック、ゲリー・バートルズなど、攻撃的なタレントを揃えていたにもかかわらず、退屈な内容に終始した。

翌シーズンもクラフは守備的なゲームプランを選択し、70年代後期に全盛を誇ったハンブルクを1-0で退けている

ヨハン・クライフの魔法でアヤックスが、フランツ・ベッケンバウアーを擁したバイエルンの知性が、ケヴィン・キーガン、スティーヴ・ハイウェイ、レイ・ケネディのスピードと情熱が躍動したリヴァプールがヨーロッパの頂点に立った後だけに、人々の目にはフォレストのスタイルが退屈に映っていた。

ただ、クラフの名言だけはメディアの興味をひく。

「わたしは敗北を忌み嫌う。わたしの性格が歪まないように、選手たちは勝利のために身を粉にするのだ」
「選手たちはわたしを愛しているが、そんなことは望んでいない。彼らは真のプロフェッショナルであればいい。ただそれだけだ」

ジョゼ・モウリーニョ(現ASローマ監督)が現れる以前、クラフほど言葉の力を持つ指揮官はいなかった。自己中心的な男ともいわれていたが、それでもフォレストは瓦解しなかった。彼のコメントはメディアだけでなく、選手たちの心にも響くものがあったのだろう。

もし、クラフが存命なら(2004年9月20日逝去。享年69歳)、古巣の現状をどのように表現するだろうか。昨シーズンは夏の市場に23人もの選手を獲得するため1億3400万ポンド(約248億円)を投入したものの、命からがらの残留だった。

ちなみにこの金額は、チェルシーの1億8100万ポンド(約335億円)、バルセロナの1億3800万ポンド(約255億円)に次ぐ、ヨーロッパ・トップ3のぜい沢である。チャンピオンジップから昇格してきたばかりのフォレストが、だ。

今シーズンは6830万ポンド(約126億円)。前年比およそ50%ダウンとはいえ、ローンやフリーエージェントを含めて13人の新戦力がやって来た。移籍期限の最終盤に、バタバタと7~8人と契約した。例によってスティーヴ・クーパー監督に強化の権限はなく、オーナーを務めるエバンジェロス・マリナキスの独断専行だ。

クラフであれば、「マリナキスが実権を握るかぎり、わたしの性格はさらに歪む」とでもかましているに違いない。いや、さっさと辞任しているか……。

フォレストは最上層部が二年連続で暴走した。チームの実状を無視して乱獲する。現場はたまったものではない。攻撃の切り札だったブレナン・ジョンソンは、5000万ポンド(約46億円)でトッテナムに移籍した。マンチェスター・ユナイテッドからやって来たアンソニー・エランガに、代役が務まるのだろうか。

この二年で36人が加入した事実でもわかるように、マリナキスには長期的なプランも忍耐力もない。いずれファイナンシャル・フェアプレーにも抵触するリスクが大きくなってきた。

草葉の陰で、クラフが嘆いている。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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