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ハイラインに適応できず、マグワイアの序列は大きく下がった
優先順位が上がる気配はない。
「序列を決めたことは一度もない。何番手の選手という表現は好ましくない」
マンチェスター・ユナイテッドのエリク・テンハフ監督は、つねに選手を思いやってきた。しかし、彼の起用法をふまえると、センターバックには明確な序列が存在する。
①リサンドロ・マルティネス
②ラファエル・ヴァラン
③ヴィクトル・リンデレフ
④ルーク・ショー
⑤カゼミロ
マルティネスとヴァランが絶対的な第一セットであり、リンデレフが控えの一番手。彼らにアクシデントが生じた際は、ショーとカゼミロで昨シーズンを乗り切った。
そう、“有事” の際でもハリー・マグワイアを起用されなかった。この序列は今シーズンも変わらず、ユナイテッドは前キャプテンに届いたオファーに耳を傾けている。とくにウェストハムが熱心だという。週給をめぐって一度は頓挫した交渉が再開した、との情報が飛び交いはじめた。
本来はレフトバックのショー、中盤センターのカゼミロを下まわる評価に、マグワイアのプライドは傷ついているはずだ。「いまに見ておれ!」と闘志をたぎらせ、異なるクラブでユナイテッドの鼻を明かすという考え方がある。
その一方で六番手を甘受し、家族のために高額の週給を維持する選択肢はだれも否定できない。「選手は試合に出てナンボ」だとしても、週給25~30%ダウンが提示されると、やはり考え直したくなる。
さらに、今シーズンは『PGMOL』(Professional Game Match Official Limited/プロ審判協会)の独断専行により、ルールが改悪された。少々のクレーム、時間稼ぎがイエローカードの対象となり、出場停止処分のリスクが高くなっている。完全なるプレータイムの確保を理由に追加タイムが長くなったため、疲弊→負傷者続出という最悪の状況を招きかねない。
したがって各クラブとも、ひとりでも多くの選手を必要とする。優先順位とか選手の質とともに、絶対数を確保しなくてはならない。ヴァランとショーはケガが多い。マグワイアは残しておくべきCBかもしれない。
ただ、彼は機動力に欠け、ハイラインを苦手にしている。要するに、テンハフのプランにはマッチしない。ウェストハムはカウンターを得意とし、最終ラインの設定はどちらかといえば低めだ。ユナイテッドよりは、マグワイアのプレースタイルが生きるクラブだ。ドンと待ち構えて相手の攻撃を跳ね返す術なら一級品だ。
およそ八か月後にヨーロッパ選手権が開幕する。イングランド代表は優勝候補の一角に挙げられ、ガレス・サウスゲイト監督もマグワイアに絶対の信頼を寄せてきたが、ユナイテッドの六番手は選びづらい。
残留か、移籍か……。プレミアリーグの移籍市場は9月1日23時に幕を閉じる。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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