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サッカー フットサル コラム 2023年8月29日

最年少記録更新「スター誕生」、浮かれた空気のすぐ隣にある危険な落とし穴

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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ラミン・ヤマル

ビジャレアル戦でセンセーションを起こしたラミン・ヤマル

16歳のラミン・ヤマルがセンセーションを起こしている。

先週末のビジャレアル戦では2本のシュートを枠に当て、そのうちの1本がレバンドフスキの前に転がってバルセロナの決勝点になった。1日に代表招集があるのだが、史上最年少で招集されることが確実視されている。スペイン生まれなのだが母親がモロッコ国籍で、モロッコ代表デビューの可能性もあるので先に唾を付けてしまおう、ということだ。

ヤマルが凄いのはほんの1カ月半前に16歳になったばかり(2007年7月13日生まれ)、ということ。日本で言えば高校1年生なのにラ・リーガで通用するどころか傑出しているのである。

右サイドで反転したり、内側に切り込むとベテランDFが逆を突かれて転んだりして簡単に抜かれる。どのくらい簡単かというと、ヤマルのアクションが普通のスピードならDFのアクションがスローモーションに見えるくらい。

もっとも、守備には苦労していて何度も突破されて失点の原因にもなっていた。体がまだ子どもなのだから接触プレーもある守備で後れを取るのは当たり前。パワー対パワー、持久力対持久力ではかなわない。逆に攻撃では接触をさせないテクニックで抜いて行く。

大事なのは攻撃、つまりタレントであって、体力を付けることや経験で何とかなる守備は心配する必要はない。

才能のなさは努力で克服できるが、天才が努力したらいかなる努力家も絶対に追い着けない。ヤマルは天才で、体ができて経験を積めばどこまで凄い選手になるのか、とシャビ監督もファンもメディアも夢見てしまうのも無理もない。

だが、16歳とか17歳とかで注目されてしまうのはマイナスも大きい。

アマルのドリブルを見て、アンス・ファティを思い出していた。彼のドリブルも次元が違っていて、まるで相手がスローモーションのように見えたものだ。

ちょうど3年前、19年8月16歳でデビューした彼が今何をしているか?

ビジャレアル戦ではヤマルと入れ替わりに14分間プレーした。つまり、序列がヤマルの下になっていて、放出の噂が出ている。デビュー1年後に膝の半月板を損傷、再発と手術を繰り返した後には、ドリブルのキレがすっかり失われてしまった。

ペドリがバルセロナでデビューしたのは20年9月、17歳の時だった。

センスの塊でいきなり大人のプレーができた彼はラ・リーガ、EURO2020、東京五輪とフル出場を続けた。だが、さすがにやり過ぎた。タレントは底知れぬものがあったが、体が悲鳴を上げた。デビュー1年後の21年9月に初めてケガをして以来、計6回負傷をし今も欠場中だ。

勘違いしないでほしいのは何もバルセロナが悪い、という話ではなく、どこのクラブでも同じことが起きた可能性が高い、ということ。若い選手はみんな大好きで、最年少記録が更新されるとそれだけで「スター誕生」とはしゃいでしまう。で、浮かれた空気に後押しされて監督はついつい使い過ぎてしまい、本人も期待に応えようと頑張り過ぎてしまう。最初は結果が出るのでウィンウィンで回っていくが、危険なのは1年を過ぎたあたりだ。

ブレーキをかけるのは大人しかいない。大事に少しずつ使ってほしい、というのは「即、結果」のサッカー界では無理な話だろうか?

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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