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サッカー フットサル コラム 2023年8月9日

アメリカ国民の興味はワールドカップに傾くのだろうか

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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94年大会の決勝はブラジル対イタリア。炎天下の闘いで、両チームとも精彩を欠いていた

94年大会の決勝はブラジル対イタリア。炎天下の闘いで、両チームとも精彩を欠いていた

29年前のアメリカは、ちょっと違っていた。

1990年のイタリアは大会前からワールドカップ一色だった。日本と韓国が共同開催した2002年大会も空前絶後のトランス状態となり、いくつもの問題がクリアできなかった昨年のカタール大会ですら、国中が嬉々としていたという。

「なにしに来たんだい?」

シカゴのオヘア国際空港からホテルに向かう車中で、タクシードライバーに話しかけられた。

「なにしにって、ワールドカップの取材で日本から……」
「ワールドカップ? なんの?」
「いやいや、サッカーでしょ。あなたたちのお国がホストカントリーで、開幕戦はシカゴのソルジャーフィールドだよ」
「知らないなぁ。だってシカゴはブルズ(NBA)があって、カブスやホワイトソックス(ともにMLB)、ブラックホークス(NHL)もあるからねぇ。サッカーのワールドカップといわれてもねぇ」

29年前の記憶だけにかなり怪しいが、大筋からはそれていない……と思う、信じたい、たぶん大丈夫だ。

タクシードライバーの指摘どおり、シカゴは盛り上がりを欠いていた。テレビのニュースもワールドカップがトップではなく、テニスの全米オープンだったり、ゴルフの全米プロだったり……。

しかも、大会期間中に『OJシンプソン事件』(注参照)が起きたため、メディアの興味はスキャンダルに傾いていった。

その後、デトロイト、ダラス、ボストン、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど、南部とニューヨークを除く都市を取材でまわったが、クールな雰囲気は否めなかった。

トリノ、ミラノ、ボローニャ、フィレンツェ、ジェノヴァ、ナポリ、サルデーニャ、シシリー、ローマと、国全体がワールドカップを熱烈歓迎するムードに包まれていた90年イタリアとは、やはり違う。

次回のワールドカップは、26年にアメリカ、カナダ、メキシコの共同開催である。縦に長く、横も広い。取材エリアを欲張ったメディアは、大会の途中で疲弊するに違いない。

なにより、初の三か国共同開催は各国の温度差も気になるところで、とくにアメリカ国民の興味はワールドカップに傾くのだろうか。

26年大会は従来どおり6~7月開催だ。アメリカで一番人気のNFL、二番目にポピュラーなNBA、三番手のNHLはシーズンオフを迎えるものの、MLBは開催中だ。

大谷翔平がホームランと打率と勝利数と防御率と奪三振数で、異次元の領域に達しているかもしれない。94年同様、テニスの全米オープンとゴルフの全米プロも開催されるだろう。

現地時間7月5日に行われたLAギャラクシー対ロサンゼルスFCのローカルダービーには、8万2110人もの観衆が集まった。アメリカのサッカー人気は確実に高まっている。

昨年のカタール・ワールドカップでも、タイラー・アダムズ、ウェストン・マッケニー、ユヌス・ムサといった中盤は各方面で高く評価された。

だが、29年前のムードが心のどこかに引っかかる。そして94年大会のようにヨーロッパのゴールデンタイムに合わせてテレビ中継すると、アメリカの場所によっては炎天下の試合を余儀なくされ、試合の質は絶対に低下する。

年寄りの取りこし苦労だろうか。

【注】OJシンプソン事件:アメリカン・フットボールのスター選手として活躍した OJシンプソンが、元妻ニコル・ブラウン・シンプソンさんと、彼女の友人ロナルド・ゴールドマンさんを殺害した罪に問われた。刑事裁判では無罪となったが、民事裁判では有罪。OJには3350万ドル(当時のレートで34億1700万円)の罰金刑が下っている。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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