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すると、川崎の鬼木監督は83分に“勝負手”を打った。
DFの大南拓磨を投入してスリーバックとして、左サイドでは登里に代えてフレッシュな佐々木旭を投入。右の山根視来、左の佐々木のポジションを上げてサイド攻撃を強化。家長昭博をトップに上げ瀬川祐輔とツートップを組ませる。そして、DFの大南には攻撃にも期待したというのだ。「攻撃的イメージの3枚だった」と鬼木監督。
たしかに攻撃的なシステム変更だった。しかし、リスクも伴う交代だった。
横浜FMは苦しい状況とはいえ、トップには得点力のあるアンデルソン・ロペスが残っていたし、左右には水沼宏太と宮市亮がいた。一発の攻撃力はかなり高い。しかし、それでも鬼木監督はリスクを背負って勝負に出た。この試合で勝つことこそが優勝を目指すための最後のチャンスだったのだ。
そして、川崎は“賭け”に勝った。
決勝ゴールの場面を振り返れば、鬼木監督の勝負手が見事にはまったことがわかる。
中盤でドリブルでボールを運んだ遠野大弥からのパスをツートップの一角、瀬川がバイタルエリアで受ける。そして、その瞬間、鬼木監督が「攻撃に行きたがるタイプ」と表現したDFの大南が相手ペナルティーエリア内深くまで走り込み、瀬川のパスを受けた大南は相手GKのタイミングを外して低いクロスを通す。そして、そこにもう1人のCB車屋が走り込んでいたのだ。
川崎の「反転攻勢」はきわめて困難だ。
横浜FM戦の勝利で勝点差は縮まったが、横浜FMとも神戸ともその差はまだ12ポイントもある。しかも、追走するターゲットがどちらか一つだけなら横浜FMや神戸が何らかの原因で失速することも考えられるが、両チームがともに調子を崩すということは考えにくい。
しかし、横浜FM戦での劇的な決勝ゴールと、それを生み出した鬼木監督の勝負勘を見せつけられると、「まだまだ分からない」という気にさせてくれる。
興味深いことに、7月22日の神戸戦の後、8月12日には今度は川崎ホームの等々力で再び神戸と対戦する日程になっているのだ。今後、負傷で戦列を離れていたFWのレアンドロ・ダミアンやMFの大島僚太、DFのジェジエウなどが復帰すればチーム力は間違いなく上向く。
もし、神戸との2試合で川崎が連勝したりすれば「反転攻勢」は現実味を帯びてくる。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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