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ラウール・ゴンサレス(レアル・マドリー Bチーム監督)
私がスペインに住みはじめた93-94シーズン、2部リーグにはバルセロナ、レアル・マドリー、アスレティック・ビルバオのBチームがいた。数年後にはアトレティコ・マドリーのBチームが黄金期を迎え、98-99には優勝寸前(2位)までいった。当時、私は地元のサラマンカ(最初の監督は後にヴィッセル神戸を率いたファンマ・リージョだった)のソシオで2部の試合をよく見ており、“強豪はBチームですら強い”というのが強烈に印象に残っている。
あれから30年、今季23-24の2部リーグにはビジャレアルBしかいない。バルセロナBが最後に参戦したのは17-18、レアル・マドリーは13-14。ここ10年ほどは2部へ昇格して来てもほとんどが1年で降格。Bチームが皆無のシーズンも珍しくなくなってしまった。
3週間前のコラムで、ラウール・ゴンサレス率いるレアル・マドリーBが昇格できず、同じプレーオフでバルセロナB、セルタB、ソシエダBも敗退したことをお伝えした。
Bチームはなぜ競争力を失ってしまったのか?
理由は3つある。
1つは、あのボスマン判決による外国人選手の増加。
EU(欧州連合)とEUに準ずる国の選手が外国人扱いされなくなってスペインに流入し、2部リーグのレベルを上げてしまった。
もう1つは、Bチームの低年齢化。
13-14からBチームの選手に23歳(GKは25歳)の年齢制限が設けられた。これは“Bチームの隠れトップチーム化”を防ぐためだったが、結果的に競争力を下げた。
3つ目は、若手タレントのキャリアプランからBチームが外れかけていること。
ラウールのチームの平均年齢が19歳ちょっとだったことはお伝えした。今や17歳や18歳でトップリーグにデビューする時代。若手抜擢への恐怖心が薄れ、3部相当のリーグに参戦するBチームに“二十歳を越えて所属するのは時間のムダ”という空気が生まれている。
国内の1部で残留目標のチームとか、2部で昇格目標のチームとか、海外の5大リーグに準ずるリーグ(ベルギーとポルトガル)とかには、若くて経験不足でもレアル・マドリーやバルセロナが注目するレベルのタレントには十分需要がある。
選手側にも、Bチームに居続けるよりも一度武者修行に出る方がトップチームへの近道だし、たとえトップチームできなくてもその後のキャリアを築き易い、という計算も働くようになっている。レバークーゼンから出戻ったカルバハルやアーセナルで開花したウーデ・ゴールがそうだったように。
もちろん、ビジャレアルやソシエダ、セルタ、アスレティック・ビルバオのようにBチームからトップチームへのルートが確立しているクラブもある。だが、少なくともレアル・マドリー、バルセロナ、アトレティコ・マドリー、セビージャあたりのBチームは、トップチームへの最終ステップとはすでに言えなくなっている。
文:木村浩嗣
木村浩嗣
編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。
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