ロジャーズとポッターも！プレミアリーグは解任ラッシュ

ブレンダン・ロジャーズ前監督

現地時間4月1日、レスターがブレンダン・ロジャーズと袂を分かち、翌日にはチェルシーが、グレアム・ポッターを解任した。

開幕節のブレントフォード戦で主導権を握りながらツメを誤り、2－2の引分け。2節のアーセナル戦から喫した6連敗のなかには、ブライトンに2－5、トッテナムに2－6という大恥までさらしている。

この時点で、「ロジャーズ解任間近」との情報が飛び交いはじめていた。昨シーズンから表面化していた監督とベテランの対立は深刻の度合いを深め、ロッカールームは崩壊寸前だったようだ。

結果論になるものの、もう少し早く手を打つチャンスはあった。ワールドカップを挟み、年が明けてもパフォーマンスが向上する兆しがなかったのだから、ロジャーズ体制の限界は明らかだった。

ニースに去った名GKカスパー・シュマイケルの穴を埋めなかった強化部門のミス、「今シーズンで契約が切れる選手の延長交渉は認めない」と語気を荒げたロジャーズ、テンションの低い選手たち……。レスターは満足に闘える状態ではなく、指揮官の解任に伴う心機一転しか策を持たなかった。

なお、残り10試合はアダム・サドラー、マイク・ストウェル両コーチの暫定体制になる見込みである。

さて、筆者はつねにポッターを擁護してきた。シーズン途中の就任、強化プランの細部に関われないジレンマ、メガクラブ初体験……。監督としてはがんじがらめだったからだ。

それでも3月を迎えるとチーム状況は上向いていった。チャンピオンズリーグを含めた公式戦を3勝1分けで乗り切り、先週末のアストンヴィラ戦を迎えた。

猛攻に次ぐ猛攻だった。人もボールもよく動き、プレー強度も申し分ない。前半に1点でも取れていれば、一方的な展開に持ち込めたはずだ。

18分、マルク・ククレジャのクリアミスをラリー・ワトキンズに拾われた。52分、アラン・マッギンに強烈すぎるミドルを許した。チェルシー・サポーターが胸躍る時間が続いていただけに、納得しかねる0－2の敗北だった。

「すべての責任はわたしにある」

ポッターの発言に嫌な予感がした。敗れた場合の覚悟ができていたのだろうか。前述したように試合内容が上向き、トレーニングでも選手たちの笑顔が弾けていた矢先だけに、なんともせつない。

20試合以上チェルシーの監督を務めた者のなかで、平均勝点1.27はグレン・ホドルと並び歴代ワースト。27試合を消化した時点の29得点は、1993－94シーズンの26得点に次ぐワースト2（プレミアリーグ発足後）。ホームゲームの勝率36.4％は2016－17シーズン以降では最低。

優勝争いやCL出場権をめぐるレースはもちろん、ヨーロッパリーグの権利すら遠のきつつある。

しかし、昨年9月にトーマス・トゥヘル（現バイエルン監督）をわずか5分のミーティングで、ポッターを206日で見切ったオーナーのトッド・ベーリーも猛省しなくてはならない。監督の首を挿げかえるだけで成功できるほど、フットボールは、プレミアリーグは甘くない。今シーズン、二度の監督解任によって発生した違約金は2600万ユーロ（約37億円）。開いた口がふさがらない。

まるで、ロマン・アブラモヴィッチ体制時の悪しきコピーではないか。強くなりたいのなら、チェルシーは中長期的なプランの構築が急務である。バイエルンを解雇されたばかりのユリアン・ナーゲルスマンに早々と接触したとも伝えられるが、彼もまたポッター同様、巨大化しすぎたスカッドをまとめるにはまだまだ経験が不足している。

なお、今シーズンのプレミアリーグは解任、双方合意のうえの退団も併せ、13人もの監督がその座を追われている。誇らしくはない最多記録。次の犠牲者はフォレストのスティーヴ・クーパーか、ウェストハムのデイヴィッド・モイーズか。

文：粕谷秀樹