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サッカー フットサル コラム 2023年2月8日

ダイシ率いるエヴァートンは上々の再スタートを切ったが・・・

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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エヴァートン対アーセナル

エヴァートン対アーセナル

火の中の栗をすすんでつかんだのだから、いやはやたいしたものだ。

ショーン・ダイシである。1月21日、彼は混乱を極めるエヴァートンの監督に就任した。しかも二番手で、だ。大本命といわれたマルセロ・ビエルサ(元リーズ監督)は、コーチングスタッフの人事をめぐって対立。交渉成立には至らなかった。こうした経緯によるダイシ招聘だ。ちょっと複雑な気分ではある。

いや、バーンリーの監督を退いてからおよそ8か月、現場復帰を熱望していたダイシにとって、エヴァートンだろうが二番手だろうが、意に介する必要はなかったのだろう。練習でも積極的に選手と話し合い、檄を飛ばしていたという。

ほとんど声を発さず、たたずんでいただけのフランク・ランパード前監督とは異なる姿勢に、刺激を受ける選手も少なくなかったようだ。闘う姿勢を貫いた2月4日のアーセナル戦は1-0の勝利。ダイシとエヴァートンは、願ってもない再スタートを切った。

しかし、このクラブの問題は解決しない。オーナーのファルハド・モシリはスポーツディレクターを信用せず、みずからが懇意にしているキア・ジョーラブシアンなる “非エージェント” の意向を最優先してきた。怪しいパーティーに出席していたとか、マネーロンダリングに関わっていたとか、この男には不穏な情報がつきまとう。

だからこそ、スティーヴ・ウォルシュやマルセル・ブランズといった敏腕ディレクターが短期間で去っていった。現職のケヴィン・セルウェルも能力を発揮する機会が訪れないのだから、今シーズン限りで退任する公算が大きい。

また、ビル・ケンライト会長も自身のネットワークを駆使したタレントを勝手に推薦する。オーナーも会長も、スポーツディレクターの職務がなんたるかを理解していない、理解するそぶりもない。

リシャーリソン(現トッテナム)を除く近年の補強で失敗ばかりしている理由は、モシリとケンライトの愚行、権力争いといって差し支えない。

さらに、結果が伴わない補強費、ウクライナ情勢の悪化でロシア企業とのスポンサー契約を打ち切らざるをえなかったことなどが災いし、直近3シーズンの損失は3億7000万ポンド(約592億円)にまで膨れあがっている。当然、冬の市場に投資はできない。

オリヴィエ・ジルー、イスマイル・サール、カルヴィン・フィリップス、コナー・ギャラガー、アンドレ・アイェウ、チェ・アダムズ、ミチュ・バチュアイ、ジェラルド・ベッカー、ジャン=フィリップ・マテタ、ベト、ルーカス・ジョアン、カマルディーン・スレマナ、ニコロ・ザニオーロ、ポール・オヌアチュ……。1月にローン移籍を打診した14人もの選手に、けんもほろろに断られた。

下部組織出身の有望株アンソニー・ゴードンは、4500万ポンド(約72億円)でニューカッスルに新天地を求めた。

10節以降、1勝2分9敗とどん底まで落ち込んだランパードを解雇し、闘争本能を全面に押し出すダイシを新監督に起用した人選は悪くない。選手との距離が近い51歳の指揮官は歓迎されている。ランパードはつねに上から目線で、とっつきづらかったようだ。

しかし、オーナーと会長が考え方を改めないかぎり、エヴァートンに再建の道はない。仮にプレミアリーグから降格したとしよう。アマドゥ・オナナ、アレックス・イウォビ、ドミニク・カルバート=ルーイン、デマライ・グレイといった逸材は、揃って退団するに違いない。

3億7000万ポンドの負債を少しでも返済する策は選手の売却だ。しかし、彼らを失えば大幅な戦力ダウンを余儀なくされる。サポーターの気持ちも離れていく。

いま、エヴァ―トンはどのような状況なのか。モシリとケンライトはまったくわかっていない。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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