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サッカー フットサル コラム 2023年1月31日

久保建英の成長とレアル・ソシエダの躍進の理由

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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MVP級の活躍、久保建英

MVP級の活躍をみせた久保建英

レアル・マドリーとソシエダのクオリティの差は、1対1での突破力の差に象徴的に表れていた。

スピードか機敏さかパワーで、マーカーを置き去りにできる選手がレアル・マドリーの先発メンバーには6人──ベンゼマ、ビニシウス、ロドリゴ、セバージョス、バルベルデ、カマビンガ──いたが、ソシエダにはブライス・メンデス、久保、セルロートの3人しかいない。1対1でのマークは不十分で1対2で対応しなければならない選手の数が、レアル・マドリーにはソシエダの倍いたことが、展開に決定的な影響を与えていた。

両チームとも1対1のマークはよくできていた。ソシエダでは普通のことだが、普段はマーク漏れがあるレアル・マドリーも今季最高に近い守備で、ラインを上げてプレスを仕掛けて敵陣でボールを奪えていた。

だが、単純に突破者の数と、突破され2人目がサポートに行かないといけない機会の差で、レアル・マドリーが押し込み、ソシエダが後退させられていた。特に、30分過ぎからブライスとオヤルサバルが下がる55分までは一方的で、いつレアル・マドリーが先制してもおかしくなかった。

迫力のあるドリブル突破に、精確なコンビネーションがミックスされたため息が出るような美しい攻撃。この時間帯のレアル・マドリーは攻撃面でも今季最高に近いレベルだった。だが、最後の最後でGKレミロやエルストゥオンド、スベルディア、ル・ノルマン、スビメンディらが身を投げ出して得点を許さない。レアル・マドリーが勝ち点を失う場合、シュートの不正確さが理由なのだが、この試合に限っては運に恵まれなかったことと、相手の執念が上回った、というべきだろう。

ソシエダが盛り返すのはロベルト・ナバーロとマリンが入り、システムをいつもの[4-4-2]ダイヤモンド型から[4-4-1-1]へ変更してからだ。

59分には久保のシュートがあり、67分には久保がGKの前で1対1になりかけるシーンがあった(トラップが長くなりクルトワに激突してイエローをもらう)。66分エルストゥオンドが負傷退場してオラサガスティが入ったことで、ソシエダの中盤は久保以外全員が下部組織出身者となり、イジャラメンディ(32歳)を除くと、久保(21歳)、マリン(19歳)、ナバーロ(20歳)、オラサガスティ(22歳)と超フレッシュな顔ぶれになった。DFのスビメンディ、スベルディア、ル・ノルマンと合わせて計7人の下部組織育ちが、世界選抜と呼んでもいいレアル・マドリーと渡り合った。

これこそがソシエダ躍進の理由である。

最後に、久保のパフォーマンスをまとめておく。
[4-4-2]中盤ダイヤモンド型の頂点=トップ下で起用された久保は、非常にトップ下らしいプレーをした。例えば、CBの間に入ってボール出しをするセントラルMF(クロース)にプレスをする、というのはいつもシルバがやっていること。これまではトップ下で使われても右サイドへ流れて、[4-3-3]の右トップ的に3番目のFWとして振る舞うことが多かったが、この試合ではセルロートとオヤルサバルの後方で純粋に攻撃的MFとしてプレーしていた。久保にはシルバのような、下がって自分が囮になり周りを生かすプレーはできないが、最終ラインの前、MFの背後の中間的なスペースに入ってよくボール出しを助け、チームの前進を助けていた。

ただ、久保にクロースをプレスさせるアルグアシル監督の策は勇敢過ぎたかもしれない。

オヤルサバルとセルロートもプレスを掛けていたので、久保の背後は7人。プレスをかわされると数的有利を失って後退するしかなく、ほぼ確実にピンチになった。それでもオヤルサバルとブライスが本調子であれば“肉を切らして骨を断つ”ようなカウンターができたかもしれないのだが、そうならなかった。

ブライスは週中のコパ・デルレイ、バルセロナ戦では不要なファウルを犯して退場。攻守両面で中盤を支えてきた彼にも疲れが見える。負傷明けのオヤルサバルはまだまだ調子が戻っていない。もともとスピードがある方ではない上に判断が遅くプレーが消極的で、相手にゴール前を固める余裕を与えていた。

久保は試合開始からずっと良かったが、特に良さが出たのは、[4-4-1-1]の右サイドに入ってからだった。

押し込まれている局面でもボールをもらいに行き、最悪でもファウルをもらってマイボールの時間を増やした。巧みなトラップで前を向けた時は、周りの攻め上がりを待つ間を作ってコンビし、自らも上がって行った。

が、より驚かされたのは守備面での貢献である。
トップ下と違って、サイドでは対面の素晴らしいドリブラーであるカマビンガを自陣深くまで追う必要があった。そして、右SBのスベルディアとともにビニシウスを止めないといけない。もともと背走は苦手だし、すでにイエローをもらっていたし、疲れる時間帯でもあった。“ソシエダが失点するなら久保のサイドだ”と思っていたがそうはならなかった。むしろ逆。誰よりもカマビンガを止め、誰よりもビニシウスに突破を許さなかった。チームMVPは間違いなく、試合のMVPに選ばれても良かったくらいだ(ロドリゴの選出はなぜ?)。バルセロナ戦でもチームMVPは久保だったと思う。

技がキレているし運動量もあり集中力も高い。攻撃と守備の両面においてこれだけレベルの高いパフォーマンスは見たことがない。あの守備のレベルなら、いずれブライスの代わりに右MFとして試されのではないか。より穴のない、より完璧な選手に成長していることがはっきりわかった大一番だった。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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