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クラブ愛をファンに伝える久保建英
シャツを広げて胸エンブレムにキスをして、ファンのところへ駆け寄って揉みくちゃにされた瞬間に、久保建英はソシエダのヒーローになった。あのゴール、あのセレブレーションは強烈にファンの心に刻まれたことだろう。
これで、たとえこの先レアル・マドリーの買戻しのオファーがあったとしても、無条件に首を縦に振れなくなった。エンブレムへのキスは愛の誓いであり、安易に裏切ってはならないのだ。
シルバのパスを受けて相手DFを股抜き、GKをフェイントで一歩も動けなくしておいて突き刺したニアへ強烈なシュート。これで2-0。喜びの余りシャツを脱いでイエローカードをもらった際に久保は“カードをもらっても祝う価値があった”という意味のことを審判に口走った、とレポーターが伝えた。
「いや、そうは思わない」と早速、解説のアクセル・トーレス(スペイン一の日本通)の突っ込みが入った。まだ、37分。退場を恐れて思い切ったプレーができなくなるし、試合の流れによってはアルグアシル監督が最初に切る交代のカードになりかねない。
直後にアスレティック・ビルバオが1点を返して後半に仕切り直しとなり、アクセルの予感が当たりそうになったが、結局、このゴールが決勝点となった。62分、裏へ抜け出しDFの前に入って倒された久保のプレーがPK+レッドカードとなり、これをオヤルサバルが決めて3-1。2点差で相手は10人になり、試合は実質的に終了した。
このままソシエダと久保の二人三脚が続けばレアル・マドリーの興味を引く可能性はあるだろう。ソシエダはスペインの地方クラブであり、レアル・マドリーは世界一、二を争うクラブである。CL優勝と、それに伴う世界的な名声はソシエダでは絶対に手に入らない。それはソシエダファンも、会長も、監督も承知しているだろう。
スペインのファンはリアリスティック(現実的)で、あり得ない夢を見ることはない。レアル・マドリーやバルセロナが生きているのが別世界であることは、100年間叩き潰され続けてきたことで血肉に沁み付いている。だから、選手がビッグクラブのオファーになびくことは理解できるし、フロントも残留工作よりも移籍金の吊り上げの方に腐心するはずだ。地方クラブが超一流選手を抱えることの宿命であり限界である。
だが、そうであっても、このまま久保の姿がソシエダファンの脳裏に焼き付いていくほど、喪失(移籍)は心により大きな穴を開けることになるだろう。
ファンに愛される、契りを結ぶとはそういうことである。
文:木村浩嗣
木村浩嗣
編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。
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