アストンヴィラにはエメリのプランに適した選手が揃っている

アーセナル時代のウナイ・エメリ

今シーズンもチェルシーがトーマス・トゥヘルを、ウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズがブルーノ・ラージを早々と解雇し、レスターのブレンダン・ロジャーズとサウサンプトンのラルフ・ハーゼンヒュットル、リーズのジェシー・マーシュは風前の灯火だ。

そして現地時間10月20日、アストンヴィラがスティーヴン・ジェラードを更迭した。11試合で2勝3分け6敗。開幕早々にジエゴ・カルロスをアキレス腱の断裂で失ったとはいえ、フィリッペ・コウチーニョ、ドゥグラス・ルイス、ジョン・マッギン、ダニー・イングス、タイロン・ミングス、エミリアーノ・マルティネスといったタレントを擁している。彼らを活かす明確なプランを提示できなかったジェラードの非は否めない。

ディーン・スミスの後を受けた昨シーズンも含め、公式戦は13勝8分19敗。上層部とサポーターが満足した試合はほとんどなく、ジェラードはわずか11か月と9日でアストンヴィラを追われた。

この結果、ユルゲン・クロップの後継候補から大きく外れた。ミッドランズの古豪を再生できなかった男に、リヴァプールの監督が務まるとは考えにくい。20ー21シーズン、レンジャーズを無敗優勝に導いたとはいえ、スコットランドとプレミアリーグではレヴェルが違いすぎる。

ただし、ジェラードはまだ42歳。監督としてのキャリアは4年でしかない。今後は外野からフットボールを再研究するとか、名監督のもとでコーチ修行するとか、あるいは下部リーグで腕を磨くとか、再チャレンジの道を焦らずに模索してほしい。

さて、アストンヴィラは後任にウナイ・エメリを起用した。600万ユーロ（約8億8000万円）の違約金を支払い、ラ・リーガのビジャレアルから引きぬいたのである。

セビージャで3回、ビジャレアルでも一度ヨーロッパリーグを制し、戦術家としても名高いエメリは、どのようにしてミッドランズの古豪を建て直すのだろうか。

19年11月、メスト・エジルとの確執や英語力不足などが発端となり、エメリはおよそ一年半でアーセナルを解雇されている。とくに後者は深刻で、通訳を介したミーティングは長引き、最終的にはエメリがいわんとすることを文書で配したとも伝えられた。コミュニケーション不足が、求心力の低下に直結したという。

しかし昨シーズン、彼は守備的なプランをベースに、ビジャレアルをチャンピオンズリーグのベスト4にまで導いた。幸い、新天地には中盤センターにマッギン、D・ルイス、ブバカル・カマラ、左サイドバックにルカ・ディニュ、GKマルティネスなど、守備者に有能な選手を揃えている。

したがってコミュニケーションさえ失敗しなければ、エメリはアストンヴィラでも成功する確率が高い。いま、英語力は上達しているのだろうか。通訳を介さず、みずからの意思を選手に伝えられるだろうか。

文：粕谷秀樹