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2戦目のクロアチア戦も0-1で敗れる。中山が中田のパスから決定的なシュートを放つシーンもあったが、相手GKのファインセーブに阻まれると、77分にこの試合唯一のゴールを沈めたのは、大会得点王に輝くダボル・シュケル。結果的にクロアチアが3位と大躍進を遂げたことも、この試合に惜敗したことの悔しさが募る。2試合を終えて勝ち点0となった日本は、最終戦を残してグループステージ敗退が決定した。
3戦目のジャマイカ戦も1-2で敗れる。のちに同国を監督として率いるセオドア・ウイットモアに2つの得点を叩き込まれ、日本も中山の大会初ゴールで1点差まで迫りながら、追い付くまでには至らず。初めて挑んだワールドカップは3戦全敗という形で幕を閉じたが、この270分間の経験がその後の日本代表の礎を築いたことに疑いの余地はない。
フランスでの3試合すべてにスタメン出場を果たした名良橋は、高校年代の今を伝えるべくJ SPORTSの『Foot!』にレギュラー出演している。番組内では名良橋がインタビューを行う時、高校生の選手に「名良橋って言うんですけど、僕のこと知っていますか?」と尋ね、申し訳なさそうに「知りません。ごめんなさい……」と答えてもらうやり取りが恒例になっている。無理もない。今年の高校3年生は2004年生まれ。フランスはおろか、日韓ワールドカップの頃も生まれていなかった世代なのだから。
ただ、令和を生きる高校生たちが当時の映像を見たとしても、きっとあの熱狂の空気感を追体験するのは難しい。日本サッカーの悲願とも言うべき、ワールドカップに初めて出場したあの日の日本代表は、その渦中にいた我々の中では、いつまでも特別であり続けている。
『ジョホールバルの歓喜』の際に試合実況をされていた山本浩さんは、日本代表の選手たちを「私たちにとって“彼ら”ではありません。これは、“私たちそのもの”です」と表現する名言を残している。我々の言いたかったことを、これ以上過不足なく表現している言葉を、私は他に知らない。
激闘のアジア最終予選を勝ち抜き、フランスでワールドカップの舞台に立った彼らは、まさに“私たちそのもの”だった。どれだけ今の高校生が名良橋のことを知らなくても、あの日本代表に胸をときめかせた者にとっての名良橋は、“私たち”を代表して世界と戦った、正真正銘のヒーローなのだ。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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