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サッカー フットサル コラム 2022年9月13日

スタジアムで起きた緊急事態を救ったスペインサッカーの教訓

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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スタンドでの救命活動をみつめる選手たち

スタンドでの救命活動をみつめる選手たち

先週末カディス対バルセロナでファンの1人が心臓発作を起こし、試合が中断された。69歳の男性で5分間ほど呼吸停止状態だったが一命を取り留め、今もICUにいるものの徐々に回復している、という。

試合終了まで残り10分、カディスのゴール裏での出来事だったが、命に関わる緊急事態の場合、試合が止められることになっている。プレーが続いた場合、誰にも気が付かれないまま不幸が起きてしまうことがあるからだ。実際この男性の横に座っていた娘は、後ろの人から様子がおかしい、と言われるまで父の異常に気が付いていない。

すぐさま試合を止め、救命に専念させた主審の好判断が命を救った、と言われている。

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起こったのがサッカースタジアムであったことも運が良かった。

スタジアム内のあちこちにAED(自動体外式除細動器)が備えられているし、当然、赤十字の医療チームも両チームの医師団もAEDを持っている。カディスのGKレデスマがAEDをスタンドに投げ込むシーンがあったが、あれは万が一のための予備だった。さらに、お客さんの中にいた心臓外科医も現場に駆けつけている。

選手とファンの反応も模範的だった。

選手は誰もが心配そうに見守り、バルセロナのアラウホのように祈りを捧げる者もいた。中断が1時間に及んでもファンは黙って辛抱強く再開を待った。

スペインのファンには暴力的だったりお行儀が悪かったりする者も一定数いるが、スタジアムでのアクシデントについては非常に尊敬もって臨む。

一目見て、重傷とわかる負傷の場合(例えば先週末ソシエダのサディクに起こったような)、退場する選手へは暖かい拍手が両チームのファンから送られる。ライバル心を乗り越えた“早く良くなってほしい”という願いからである。

スペインサッカー界は2つの悲しい事件を経験している。

2007年8月セビージャのアントニオ・プエルタは試合中に倒れ、そのまま帰らぬ人なっている。セビージャのお客さんはあの時以来、非常にセンシティブで、後にやはり選手が気を失って倒れたことがあったが、救命措置を息を呑んで見守った後、意識を取り戻すと満場の拍手が沸き起こったことを覚えている。

09年8月エスパニョールのダニ・ハルケは合宿中に倒れて、やはり帰らぬ人になった。プエルタは22歳、ハルケは26歳だった。

背番号にちなんで今も試合開始16分、21分にはホームスタジアムでは拍手が起きるのだが、ちょうど先週はエスパニョール対セビージャで両チームのファンが一緒に2度拍手をするところを見た直後、カディス対バルセロナでの出来事だった。不幸中の幸いはサッカーファンみんなの願いによって起きたのかもしれない。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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