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サッカー フットサル コラム 2022年7月1日

大株主の心強いサポートを得たトッテナムが移籍市場をかきまわす

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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ハリー・ケインとソン・フンミン

ハリー・ケインとソン・フンミン

イヴァン・ペリシッチをインテル・ミラノから、サウサンプトンからはフレイザー・フォースターを獲得し、ブライトンのイヴ・ビスマも手に入れた。トッテナムの補強が着々と進んでいる。

ビスマの獲得は大ヒットだ。ボール奪取能力に優れたMFで、ピエール=エミル・ホイビュアとロドリゴ・ベンタンクールの負担を著しく軽減するに違いない。彼ら3人なら相手の進入を抑え、少なくともスピードダウンできる。2021-22シーズンに喫した40失点は大幅に減るだろう。

また、ジェド・スペンス(ノッティンガム・フォレスト)との交渉も順調で、2021-22シーズンまでエヴァートンのリクルート担当だったグレタル・ステインソン、レンジャーズのチーフスカウトを務めていたアンディ・スコールディングなど、有能なスタッフも次々にやって来た。

ドン・レヴイ会長とアントニオ・コンテ監督は本気だ。

昨シーズンまでのトッテナムは経済的なアドバンテージを持っていなかった。喉から手が出るほど欲しい人材だったとしても、リヴァプールやマンチェスター・シティ、チェルシーと競合した場合、100パーセント負ける。

今年1月もルイス・ディアスとの交渉で先んじながら、リヴァプールに横取りされている。この苦い経験から、獲得が望み薄の選手と交渉しても時間の無駄だ。経済的アドバンテージを持つ3チームとは喧嘩せず、補強に関しては我が道を行く──に転換を図っても不思議ではなかった。

しかし、大株主の『ENICスポーツ』が最大1億5000万ポンド(約240億円)の増資を発表。マネーゲームでも十分に戦える体制を整えた。

心強い支援を受けたコンテ監督はDFラインの強化に主眼を置き、インテル・ミラノのアレッサンドロ・パストーニ、バルセロナのクレマン・ラングレといったレフティのセンターバックの動向をチェックしている。

インテルもバルサも大幅なコスト削減を余儀なくされている。トッテナムのディレクターを務めるファビオ・パラティーチが詰めを誤らなければ、コンテ監督のリクエストが叶う公算は大きい。いやいや、240億円もの増資により、さらなる大物を釣り上げる可能性まで浮上してきた。

もちろん、余剰戦力の整理も忘れてはならない。ジェオバニ・ロ・チェルソ、セルヒオ・レギロン、ハリー・ウィンクス(エヴァートンと交渉中)、ステフェン・ベルフワインは換金の対象だ。

直近1~2シーズンの不振で評価が暴落しているタンギ・エンドンベレは、25年6月まで残っている契約を解除する方向で話し合いが進行しているという。

なお、少なからぬサポーターがエモーショナルな帰還を待望していたクリスチャン・エリクセンは、クラブのニーズに適合しないと判断され、補強リストから外れた。

チームの完成度を踏まえると、2022-23シーズンのトッテナムがリヴァプール、あるいはシティを凌いでプレミアリーグのトップに立つとは考えにくい。ただ、移籍市場でアドバンテージを得たいま、二番手グループのトップに立つだけの体制は整えられるに違いない。2シーズン連続のチャンピオンズリーグ出場権獲得は達成可能であり、FAカップやリーグカップは手が届くタイトルだ。

トッテナムのサポーターにとって、楽しい夏が始まった。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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