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堂安律
6月14日、日本代表はチュニジアとの強化試合に臨んだ。
チュニジアといえばモハメド・ガムーディである。1964年東京オリンピックの男子1万メートルで銀メダル。最終ラップだったと記憶しているが、ロン・クラークとビリー・ミルズの間を強引に割ったとき、実況していた北出清五郎アナウンサーの声が、「これは酷い」と明らかに上ずった。沈着冷静な北出さんが、である。まぁ、フットボールにはなんら関係ないが……。
それでは本題へ──。日本代表である。
パラグアイ戦もガーナ戦も、DFのイージーミスから失点した。ブラジル戦は全体のラインが間延びし、超一流との差を痛感した。板倉滉の奮闘で1失点に抑えたにすぎず、善戦とはいえない。
またしても、だ。3失点すべてにミスが絡み、0-3でチュニジアに敗北。
無理をしてタックルを仕掛けるシーンだったのか、なぜ譲り合ったのか、マイボールを簡単に失うのか……。個の力で世界の列強に劣る日本は、組織力の向上こそがカタール・ワールドカップの目標に定めたベスト8以上へのキーポイントであるにもかかわらず、6月の4連戦を通じて進歩していない。
冨安健洋と酒井宏樹のコンディションが整いさえすれば、多少はプラスになるとも考えられるが、いやいや、希望的観測が過ぎる。
また、攻撃面は伊東純也が精度の高いフィードを配しても、三苫薫がドリブルで相手DFを2~3人おびき寄せても、ペナルティボックス内に人がいなかったり、いたとしてもマーカーと駆け引きしていなかったり……。
永きにわたって指摘される決定力不足は、森保監督のもとでも改善される雰囲気は皆無だ。釜本邦茂の再来など期待できないのだから、選手一人ひとりが得点意欲にスイッチを入れるしかない。ペナルティボックス内でシャイになる選手が、日本は多すぎる。
さらに最終テストの意味合いがあったとしても、フィジカルにすぐれたチュニジアに対し、久保建英、堂安律、田中碧、三苫といった軽量級を同時に起用するベンチワークにも不安と疑問を隠せなかった。
ワールドカップ開幕までおよそ五か月。ドイツやスペインより実力で劣るチュニジアに0-3の敗戦は、この世の終わりではないものの、絶望感が頭をもたげてくる。良薬は口に苦し、敗戦を糧にしての決まり文句も虚しい。
最終テストは嫌な形で終了した。最終枠23名(26名に増える可能性あり)の当落線上と伝えられる久保、堂安、前田大然、古橋亨梧も目立ったアピールはできず、上田綺世は負傷のために重要なテストを受けられなかった。
どうしたものか、ポジティブな話題が見当たらない。チュニジア戦に勝利を収め、間違った認識でワールドカップを迎えるよりはまだマシだ。アンダー21から有望な若手を抜擢するとか、もう一度だけ長谷部誠の力を借りるとか、大胆な人選も考えるべきかもしれない。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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