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サッカー フットサル コラム 2022年6月10日

チェルシーは胸を張って堂々と新しい時代を築け!

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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選手に指示を送るトゥヘル監督

選手に指示を送るトゥヘル監督

ウラジーミル・プーチンの蛮行は、多くの人々にダメージをもたらした。

ロマン・アブラモヴィッチもそのひとりである。ビジネスライクな付き合いだったものの、狂信的な指導者に投資していたことが明るみに出た以上、チェルシーのオーナーを続けられるはずがない。

マリアナ・グラノフスカヤも同様だ。

「アブラモヴィッチに深く関わった人間は、新体制のチェルシーから排除すべきである」

ジュリアン・ナイト委員長(英国デジタル・カルチャー・メディア・スポーツ省)のひと言で、グラノフスカヤの人生が変わった。チェルシーの新オーナーに就任したトッド・ベイリーとクリアレイク・キャピタル率いるコンシーシアムは敏腕女性CEOの留任を希望していたが、英国政府の意向には逆らえない。

プーチンがおとなしくさえしていたら、アブラモヴィッチもグラノフスカヤもチェルシーの将来を担うはずだったのだが……。

さて、上層部の大転換は現場にも少なからぬ混乱を招き、アントニオ・リュディガーがレアル・マドリーに新天地を求めた。6月末日に現行の契約が満了を迎えるマルコス・アロンソとセサル・アスピリクエタは、スペインのトップクラブからオファーが届けば移籍する公算が大きい。

一年ほど前、鳴り物入りでやって来たロメル・ルカクは早くもプレミアリーグの厳しさに音を上げ、「インテル・ミラノに戻りたい」と駄々をこねはじめた。

また、エンゴロ・カンテはは2021-22シーズンの試合出場数(プレミアリーグ)が26。足首やハムストリングの負傷、新型コロナウィルスの陽性反応が影響し、20-21シーズンから7試合も減っている。31歳になったいま、肉体的には下降線を描いている。

ルカクを除く4選手は、近年のチェルシーを支えた功労者だ。晴れの日も雨の日も懸命に闘ってきた。20-21シーズンのチャンピオンズリーグ制覇も彼らの貢献度は高く、身を粉にしてフランク・ランパード解任で揺れるチームを守った。

だが、新体制の発足に伴い、少なからぬ世代交代が図られるのだろう。功労者たちがひと区切りつけたとしても不思議ではないほど、この二か月のチェルシーはバタバタしていた。

「数人の選手は出ていくに違いないが、競争力を高めるためにも早速、再構築に取りかからなくてはならない」

トーマス・トゥヘル監督も仕切り直しを認めている。

マンチェスター・シティとリヴァプールの強さが目立った21-22シーズンだが、チェルシーはUEFAスーパーカップとクラブワールドカップの二冠に輝いている。プレミアリーグでは3位を確保すると同時に21人がゴールを決め、15-16シーズンの20人を上まわるクラブ新記録を樹立した。

チャンピオンズリーグでもレアル・マドリーをあと一歩のところまで追い詰め、FAカップとリーグカップはともに準優勝。実力は発揮したといって差し支えない。

8月第一週に開幕する新シーズンは、明るい未来に向けたリ・セットだ。メイソン・マウント、リース・ジェイムズ、コナー・ギャラガー(クリスタルパレスからローンバック)など、将来有望な若手が揃っている。サウサンプトンで頭角を現したアルマンド・ブロヤも、トゥヘル監督は呼び戻す方針だという。

アブラモヴィッチの所有物というだけで否定的な論調も多かったが、21-22シーズンはCL出場権を見事に獲得した。現在、強化体制の整備が遅れているとはいえ、チーム自体のポテンシャルは十分だ。

チェルシーは胸を張って堂々と、新しい時代を築いていけばそれでいい。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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