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サッカー フットサル コラム 2022年6月1日

試合内容で劣っていたとしても最後に笑えればそれでいい

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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レアル・マドリー

CLを制覇したレアル・マドリー

『The xG Philosophy』が弾き出したデータによると──。

〇(2・15)3-2(3・34)●パリ・サンジェルマン
〇(2・58)5-4(4・58)●チェルシー
〇(4・28)6-5(4・38)●マンチェスター・シティ
〇(0・92)1-0(2・19)●リヴァプール

ラウンド16から決勝まで、レアル・マドリーはつねにゴール期待値(カッコ内)で下まわりながら、チャンピオンズリーグを制した。しかも対戦相手は、すべてヨーロッパのトップランクだ。プレミアリーグに至っては、1~3位がしてやられた。

今シーズンのマドリーは説明が難しい。専門用語を並べても説明がつかず、むしろ難解な用語が滑稽に映るほど、何度も何度も崖っ淵から蘇った。伝統の力、いわゆる “マドリディズモ” なのだろう。CL決勝も高い位置でボールを奪うシーンこそ少なかったが、カリム・ベンゼマとヴィニシウスはつねに危険な香りを漂わせていた。

シティとの準決勝第二戦は88分まで枠内シュートがゼロだったにもかかわらず、その後5分(延長も含む)で3点を奪っている。決勝はわずか2本のシュートで1-0の勝利だ。GKティボ・クルトワがスーパーセーブを連発。4シーズンぶり14回目(史上最多)のCL制覇。お見事、というしかない。

「最高のチームが勝つとは限らない」

かのヨハン・クライフは、1974年のワールドカップ決勝で地元・西ドイツ(現ドイツ)に敗れたとき、悔しさを隠さなかった。あの当時、彼を軸とするオランダはトータルフットボールを展開。スピーディー、かつ清流のごとく美しいパスワークで世界を魅了した。

一方、西ドイツのフランツ・ベッケンバウワー主将は、「勝った方が強いのさ」と誇らしげだった。

永遠のテーマである。近代フットボールのトレンドを踏まえれば、あらゆる面でリヴァプールがマドリーを上まわっている。とくに運動量やプレー強度など、フィジカルでは少なからぬ開きがある。10回闘えば、7~8回はリヴァプールが勝つだろう。

しかし、試合内容で劣っていたとしても、最後に笑えれば勝ちだ。自陣でのプレーを余儀なくされたマドリーは慌てず騒がすチャンスを待ち、フェデリコ・バルベルデのクロス(本人はシュートミスと……)に、ヴィニシウスが丁寧に合わせた。

全チームが流行を追う必要はない。ハイブリッド、ポゼッション、カウンター。持ち駒の個性を最優先し、勝てる確率が高いチームを創るべきだ。足もとのプレーがおぼつかないGKやDFに、「後方からビルドアップしなさい」と命じても多くのピンチを招くだけだ。小柄なFWにハイクロスを入れても意味はない。

ここ3-4シーズンの流行がリヴァプールとシティであることは認めるものの、彼らの後追いでは没個性だ。CL決勝のマドリーは素晴らしい耐性を披露し、手数でまさるリヴァプールを効果的な一発で仕留めてみせた。これもまた、フットボールだ。

20-21シーズンを最後にクリスチャーノ・ロナウドとセルヒオ・ラモスが去り、今シーズン限りでマルセロが退団する。それでもマドリーのDNAはベンゼマ、ルカ・モドリッチ、カゼミーロ、トニ・クロースが受け継ぎ、彼らの背中を見ながらロドリゴが、ミリトンが成長していく。

「マドリーはどのようなクラブであるべきか、カリムやルカ、トニ、カゼミーロから学びたい」

ヴィニシウスは21歳にして、名門の矜持に興味津々の様子だ。レアル・マドリー……つねにしたたかで、つねに強い。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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