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サッカー フットサル コラム 2022年5月31日

「研究された」リーガ挑戦3季目。久保建英のシーズン総括

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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ベンチから試合を眺める久保建英

ベンチに座る久保建英

リーガ挑戦3季目の久保建英を総括したい。

結論から言えば“研究され行き詰ったシーズンだった”、だ。

行き詰まりは数字に表れている。

今季のリーガでの出場時間は1607分。ルイス・ガルシア・プラサ監督の下、レギュラーでスタートしたことで、ビジャレアル、ヘタフェともに控え止まりだった昨季の1092分は上回った。しかし、3月にハビエル・アギーレ監督に代わると出場機会が減り、最終節は初のベンチ入りしながら出番なしとなった。ゴール数とアシスト数は1つずつ。これは昨季と同じで、1年目の2308分で4ゴール5アシストには遠く及ばない。

“久保は残留争い向きではない”というのが残留請負人アギーレの最後のメッセージだった、と思う。

守備を固めれば最悪勝ち点1は取れる。だから久保の先発はない。守備的なままリードすれば攻撃にシフトする理由はないので、久保は出番がないか出番は限りなく遅くなる。リードされれば得点が必要なので久保の出番となる(この使われ方はイ・ガンインも同じだった)。この同じ理屈で、昨季はヘタフェで出番を失っていた。

要は、久保は守備に難があり、その攻撃力もその難を埋めて余りあるほどではない、ということだ。

攻撃のプラスと守備のマイナスを通算するとマイナス、という監督の判断が、采配にはっきり表れていた。加えて、守備が苦手であれば押し込まれる展開になり消耗する先発で使うより、残り時間30分ほどで使った方が生きる、という考えもあったのだろう。

守備の穴が今季は重点的に狙われた。

久保先発の試合は、対面のサイドの選手だけでなくトップ下やセカンドトップの選手までがサイドに流れて久保の背中を狙った。

久保個人の守備意識は高くなっていると思う。ボールロスト後にアピールしてプレスの初速が遅くなる悪い癖は完全になくなったわけではないが、改善された。

だが、久保のベストのプレーであるドリブル中にボールを失った場合は、どんなに切り替えが速くてもカバーが間に合わない。ドリブルを突っ掛けて、あるいはドリブル中の近いワンツーの関係でボールを失うと、守備者としての久保は無効化され、縦へ真っ直ぐにボールを送り込むだけでカウンターが成立する。

ドリブルは現状、久保の持ち味が最も生きるプレーであり、イエローカードやFKを何度も獲得し貢献した。だから、ドリブルは捨てられないのだが、危険なカウンターに直結する両刃の剣でもある。アギーレのマジョルカの低い最終ラインであればなお更、ロスト地点が低くなりリスクが大きくなる。

久保の背中をカバーするために守備的なMFがサイドへ張り出す、という戦術的な配慮はなかった。もし、久保が得点に直結する仕事をする選手であれば、そういう特別待遇もあったのだろうが、その甲斐はない、その余裕はない、と判断された。

戦術的な指示なのか、本人の癖なのかはわからないが、ドリブルが得意なのにエリア内へ入って行く強引さには欠けた。
久保が選ぶのはエリア外を横走りし、アングルを見つけてシュートするか、逆サイドへのパスを出すかだった。これはこれで有効なチームプレーだが、久保の得点にはならない。エリア内でのプレーの少なさ、シュートの精度の低さは明らかに改善の余地がある。

3年目の行き詰まりで、リーガでの今後の展開が難しくなった。残留目的のクラブでは生きないが、中位のセビージャ、ベティス、ソシエダ、ビジャレアルのクラスへ行くには、得点力が足りない。高年俸という障害もある。もちろんレアル・マドリーには居場所がない。

来季はどこへ行くのがベストなのか、ちょっと先が見えなくなった。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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