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アーセナル戦でゴールを決めたブルーノ・ギマラエス
2021年11月8日、ニューカッスルはエディ・ハウを新監督に招聘した。以降、12勝5分9敗。実に41ポイントを稼ぎ、37節時点で合計46ポイント。プレミアリーグに余裕で残留できる。わずか5ポイントしか得られなかったスティーヴ・ブルース前監督とは雲泥の差だ。指揮官の交代は大正解、といって差し支えない。
5バックに固執してジョーディーズ(ニューカッスル・サポーターの愛称)のヒンシュクを買ったブルースを反面教師にしたのか、就任当初のハウは基本陣形に4-4-2,もしくは4-5-1を用いた。さらに今年1月のワトフォード戦から4-3-3に変更。より攻撃的なスタイルへの転換を図っている。
もちろん、すべてがうまくいっているわけではない。マンチェスター・シティとトッテナムに、5点もぶち込まれる醜態をさらした。しかし、4月8日のウォルヴァーハンプトン戦から4連勝。5月16日にはアーセナルのCL出場権獲得という希望をほぼ砕く2-0の快勝。チーム力は確実に上向いており、いい形で2021-22シーズンを締めくくれるに違いない。
「さぁ、夏の補強が楽しみだぞ」
ジョーディーズの偽らざる心境である。昨年10月、『PIF』(パブリック・インベストメント・ファンド)が買収したことにより、資金は潤沢だ。今年1月の市場でも、ブルーノ・ギマラエス、キーラン・トリッピア、ダン・バーンなどの獲得に、およそ139億5000万円を投入している。
「メディアやジョーディーズが期待するようなビッグネームは獲得しない」
『PIF』は一貫して派手な補強を否定する。UEFAが定めたファイナンシャルのルールには厳格に従い、赤字を計上してまで補強するプランはさらさらない。一説によると、今夏の予算はおよそ90億円。ジャマル・ルイス、キーラン・クラーク、アイザック・ヘイデンなど、ハウ監督の構想外となった選手の売却利益を加えつつ、限られた予算でやり繰りするという。
リヴァプールのユルゲン・クロップ監督は、現在のメンバーを固めるまで3年の歳月を擁している。エヴァートンは直近4年の市場に600億円を超える大金を投じながら、結果が伴っていない。『PIF』は、チーム創りの難しさを熟知しているということか。
急いては事を仕損じる、急がばまわれとはよくいったもので、物事を短絡的に進めてもスムーズにはいかない。サー・アレックス・ファーガソン退任後、13-14シ―ズンからの9年で7人(暫定も含む)もの監督を起用したマンチェスター・ユナイテッドも悪しき例のひとつだ。
もちろん、ニューカッスルはセンターフォワード、ウイング、センターバック、左サイドバックの補強は必須とされており、今夏も補強を図る予定だが、マネーゲームを演じるつもりはない。まずは現有勢力のレベル向上に務め、夏の市場で好ましい結果が得られなかった場合は、冬に再考する二段構えだ。
『PIF』は慎重だ。長期的な展望のもとに、ニューカッスル再建に着手している。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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