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あの51分の幻のゴールでのVARは、僕には「過剰介入」のような気がするのだ。
長谷川監督の発言の一つのポイントは「相手チームもアピールしていないのに」という点だった。
予めはっきりさせておきたいのだが、僕が言いたいのは「この試合で審判団がミスをした」ということではない。審判団は、規則に則って適切に判定を下したことのであって、時間がかかりすぎたことを除いて問題はない。
だが、あのような些細な(?)、つまり肉眼で見ているだけでは誰も(相手選手たちも)気が付かなかった事実をVARにかけるべきなのかということを問題にしたいのだ。
「はっきりとした明白な間違い」、つまりオンフィールドレビューをすれば一瞬で判定できるような間違いがあった場合には、VARはすぐに介入して判定を覆せばいい。だが、それほど「はっきりともせず、明白でもない」場合には、相手チームのアピールがなければ映像確認をしないでいいのではないか。
つまり、野球の「リクエスト」やテニスの「チャレンジ」のような形にするのだ。
たとえば、前後半に2回のチャレンジ権を与え、チャレンジが失敗したら権利がなくなる。「失点したら必ずチャレンジ権を行使する」という考え方も成立するだろうが、横浜FMの選手は、あのオフサイドには気が付いていなかった。そうなったら、後半に入ってすぐの51分にゴールが決まったとしたら、その貴重な「チャレンジ権」を行使するかどうか、横浜FMはかなり迷ったはずだ。
VARというのはすでにすっかり定着している。ACLのグループステージでは、VARがないことにストレスを感じる場面が何度かあった。
だが、VARの過剰介入は防ぐべきだろう。つまり「明白ではない」間違い、肉眼で判定できないような間違いには介入すべきではないと僕は思うのだ。そして、それを補うものとして「チャレンジ制」を導入してはどうなのだろうか?
1863年にイングランドでフットボール・アソシエーションが発足して、アソシエーション式フットボール、つまりサッカーのルールが制定されたが、当時はアンパイアが判定を下すのは対戦チームがアピールした場合だけだった。だから、「チャレンジ制」というのは、サッカーの思想からはずれたものではないのである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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