人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サッカー フットサル コラム 2022年5月4日

監督の《采配ミス》とジャーナリズム論

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
  • Line
マジョルカのアギーレ監督

マジョルカのアギーレ監督

先週末にプレビューしたバルセロナ対マジョルカは、“理由は監督だけが知っている”という試合になってしまった。2-1のスコアは、マジョルカの善戦とも言えるし、もっとできることがあったとも言える。

いくつかの疑問が残った。

なぜアブドンとババを出場させなかったのか? 温存? 次の試合は1週間後なのに。

なぜ4バックに切り替えなかった?

5バックでスタートしたのは良いとして、後半早々に2-0とされ、点を取るしかなくなったのになぜ5バックを維持したのだろう?

4バックにするタイミングは1点を返した際にもあった。70分にイ・ガンインとサルバ・セビージャが入り、久保と組んでからはボールも持てていた。得点を機にもう一押し攻撃的に、CBルソを下げてFWアブドンを入れる選択もあった。交代枠を使い切ってしまうが、残り10分+ロスタイムである。

ただ、これらの疑問の答えは、すべて“アギーレ監督が良かれと思ったから”で済むし、私の疑問へは“結果論”と言えば片が付く。

アギーレ監督が采配ミスを犯したわけではない。

采配ミスであれば、前半は互角に近い戦いができるわけがなく、1点を返して10分間ほどバルセロナを慌てさせられるわけがない。明らかなミスであれば指摘ができるが、見解の相違はミスではないので、“私ならこうした”と言うことしかできない。

私なら、ババとアブドンは使ったし、4バックに変更した。いや、最初から4バックでスタートしていたかもしれない。で、私の勇敢過ぎるプランは早々に失点することで大失敗に終わったかもしれない。

サッカー評論家の中には、後出しじゃんけんで采配を裁く者が少なくない。

結果を知ってからミスを指摘する、という全能感に酔うあまり、提案する代替案は的中すると信じて疑わない人もいる。


自分の4バックへの変更プランや4バック先発プランは失敗していたかもしれない、という可能性は考慮しないのだ。

それではあまりに不公平だろう。

それに、監督には絶対的な切り札がある。“チームのことは自分が一番知っている”という、絶対に間違いのない事実である。

監督はロッカールームに出入りし練習を指揮し、ベンチでもベンチの裏でも選手と接している。芝生の上のプレーだけでなく芝生の外での表情も目の色も見ている。選手個々のこととチーム全体のことを、ジャーナリストが監督よりも知っているなんてあり得ない。ジャーナリストなんて練習すら全部見せてもらえないのだから。

私も少年チームの監督をしていた時は“自分のチームのことはデル・ボスケよりもよく知っている”なんてうそぶいていたものだ。

そして、以上のことにもかかわらず、監督は采配ミスを犯す。

例えば、シャビ監督はピケを28分間で交代させねばならなかった。ずっとケガがちだったから完全にアクシデントとは言い切れない。これで欠場が長引けば先発させたのは判断ミスと言える。たとえ本人とメディカルスタッフのOKが出ていたとしてもである。

一方、ジャーナリストの目には、それだけエリック・ガルシアを信頼していない証拠と映ることだろう。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

  • Line

関連タグ

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サッカー フットサルを応援しよう!

サッカー フットサルの放送・配信ページへ