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サッカー フットサル コラム 2022年2月8日

ヴァーディーと家族を恐怖に陥れたタブロイド紙のデマ

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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ジェイミー・ヴァーディー

ジェイミー・ヴァーディー

PK戦の末にエジプトを破ったセネガルが初優勝。アフリカ選手権が幕を閉じ、リヴァプールのユルゲン・クロップ監督はホッとしているに違いない。

なぜなら、エジプト代表のモハメド・サラーは早ければ現地時間2月10日のレスター戦から、セネガル代表のサディオ・マネも19日のノリッジ戦までには、クラブに再合流する見通しが立ったからだ。

マンチェスター・シティとの9ポイント差(1月23日現在)を逆転し、2シーズンぶり20回目のトップリーグ制覇をめざすためにも、両エースには万全のコンディションが望まれる。

とくにパンデミックという非常時では、肉体だけではなく心のケアも必要だ。規制が緩和されつつあるイングランドでも、依然として新型コロナウィルスに感染するリスクがつきまとう。

そんなときだからこそ、だれもが寄り添わなければならない。

「寒いなか、ありがとうございました」

女子モーグルの日本代表として北京オリンピックに出場中の川村あんり選手が、報道陣を労った。金メダル候補といわれながら5位に終わった口惜しさを抑え、17歳の高校生がおとなたちを気遣うとは……。好感度、爆上がりでる。

他人を思いやる気持ちを忘れてはならない。みずからの考え方のみが正義と信じ、意見の異なる者を過度に攻撃したり、徹底的に批判したりする風潮にあるいまだからこそ、川村選手の暖かさが心地よい。

しかし、彼女のような人間らしさを、イングランドの悪名高きタブロイド紙に求めるのは無駄だった。

報道する内容の信ぴょう性が絶望的に低く、担当者のたくましすぎる想像力を拠り所とするメディアとはいえ、あまりにも度が過ぎている。

2017年3月、レスターのジェイミー・ヴァーディーが、「クラウディオ・ラニエリ監督解任の首謀者である」と、タブロイド紙にあらぬ疑惑をかけられていた。

「チャンピオンズリーグでセビージャに負けた後、俺がミーティングで監督を吊しあげたみたいに書かれていたけど、試合後はドーピング検査で3時間も拘束されていたんだ」

「ミーティングに出られるわけないじゃないか。あのニュースは全部デマなんだよ」

ヴァーディーは有料紙『Gurdian』に真相を吐露したが、本人や家族のもとに死亡宣告めいた脅迫状が届くほどの被害に遭っていた。

また、今年の冬はチェルシーが標的にされた。

「ロメル・ルカクを構想外とすることに、トマス・トゥヘル監督は主力の了解を得ている。主力とはアントニオ・リュディガー、セサル・アスピリクエタ、エンゴロ・カンテ、そしてジョルジーニョだ」

平常時なら「タブロイド紙がまたバカなことぬかしてやがる」とスルーできても、パンデミックでは心の余裕が失われているため、嘘で塗り固めた内容でもカチンと来る。

それでもイングランドのタブロイド紙は、基本的に情報の裏を取らない。おもしろければそれでいい、というスタンスだ。

犠牲者が出てからでは遅すぎる。後ろ向きすぎる批判も避けたい。ルール無視のソーシャルメディアはより厳しく取り締まるべきだ。フットボールを、世界中の人々守るためにも……。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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