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ロメル・ルカク
二年続けてパンデミックの新年を迎えた。変異株によって世界中の混乱は収まらず、日常を取り戻すまでには至っていない。東京の空はやけに青く、サッカー、ラグビー、バスケット、バレーなど、高校生のスポーツイベントが滞りなく開催されたとはいえ、スタンドの風景は寂しい。
プレミアリーグも同様だ。各クラブとも感染者が増え、選手層の厚いビッグクラブでさえメンバー構成に苦しんでいる。だからこそ一人ひとりが責任を持ち、苦境を乗り切るための注意が必要だった。
チェルシーのロメル・ルカクは、責任感をどこかに置き忘れていた。『sky italia』のインタビューに応じ、「インテル・ミラノに戻りたい」と発言したのである。発言内容はもちろんだが、クラブに無許可で、コロナ禍にもかかわらず自宅に数人のスタッフを招き入れていたのだから、チェルシー上層部が問題視するのは当然だ。
トーマス・トゥヘル監督は、現地時間の1月2日に行われたリヴァプール戦にルカクを招集しなかった。オーナーのロマン・アブラモヴィッチ、CEOを務めるマリアナ・グラノフスカイアも監督の決定を支持している。チームの輪を乱したルカクに言い訳の余地はない。
足首を痛めたり、PCR検査で陽性反応を示したり、前半戦を終了した時点で13試合・5得点。ルカクは周囲の期待に応えていなかった。この事実に焦ったのか、あるいはイタリアが本当に恋しくなったのか、彼の発言は思慮に欠け、チェルシーに対する裏切りといって差し支えない。
当然、サポーターの心証も著しく害した。しばらくの間はブーイングを覚悟しなくてはならない。トゥヘル監督が、「ロメルは自分の過ちを認めた。今月も次の夏も、彼はわれわれとともに闘いつづける」と擁護しても、わだかまりを一掃するには時間がかかる。
決して気持ちが強くないルカクにとっては厳しい環境だ。萎縮し、プレーが小さくなり、天性のフィジカルを活かせなくなる。チェルシーにとって最悪の展開だ。
ベン・チルウェルは右ヒザ前十字靭帯断裂で今シーズン中には復帰できない。20節のブライトン戦でハムストリングを痛めたリース・ジェームズも、6~8週間ほど戦列を離れることになった。
さらに、GKエドゥアール・メンディがセネガル代表としてアフリカ選手権に出場するため、少なくとも1月中はケパ・アリサバラガが代役だ。一時の不振から抜け出したとはいえ、チームに与える安心感でメンディを上まわるとは考えにくい。
こうしたマイナス要因に、ルカク問題まで付け加えられた。
前述したリヴァプール戦で、0-2から追いついた復元力は見事だった。戦略家として、モチベーターとして、トゥヘル監督は世界水準の名将だ。
しかし、ここまでアクシデントが多発すると、アイデアが尽きてしまう。1月2日現在、首位マンチェスター・シティとは10ポイント差。これ以上、離されたくはないのだが……。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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