直近2週間で12試合が延期されているにもかかわらず・・・

コロナウイルスの後遺症に悩まされたケヴィン・デブライネ

イングランド・フットボールに興味を持つまで、“ボクシングデイ” は知らなかった。

はじめて聞いたとき、当然のように拳と拳で殴り合うボクシングを思い浮かべた。ファイティング原田、海老原博幸、西城正三、大場政夫、そしてカシアス・クレイ（のちのモハメド・アリ）など、少年時代の筆者に多大な影響を与えた名チャンピオンは、どのように過ごしていたのだろうか。

そうだ、矢吹丈はどうしていたんだ？　丹下ジムでもジョーがバイトしていた林屋でも、ボクシングデイのくだりはなかったよな。まぁ、『あしたのジョー』のようなドラマティックな劇画にはふさわしくないか。

ちなみにボクシングデイとは、キリスト教に由来した英国連邦の休日。クリスマスの翌日で、貧しい人たちのために協会が寄付を募り、箱に入った（boxing）プレゼントを贈ったことがそもそもの始まりともいわれている（諸説あり）。

しかし、今年は楽しめそうもない。新型コロナウィルスの変異株オミクロンが猛威をふるい、プレミアリーグのリヴァプール対リーズ戦とウォルヴァーハンプトン対ワトフォード戦が延期になった。各クラブとも対策は講じているが、メディカルスタッフをはじめとする関係者の努力は奏功せず、直近2週間で早くも12試合が延期されている。

他国のリーグと異なり、プレミアリーグには冬休みがないため、コロナ禍の闘いは延々と続いていく。リヴァプールでユルゲン・クロップ監督の副官を務めるペップ・リンダースが、「選手のコンディションを最優先し、試合感覚を空けられないものか」と提案しても、基本的には通常開催が決定している。

年末から一か月ほど続く過密日程の期間に限定し、選手の交代枠を3人から5人、せめて4人に増やせないものだろうか。

「選手層の厚いビッグクラブが有利になるルール」と、中小のクラブが拒否反応を示している。「伝統を守るべきだ」との指摘も聞こえてきた。

柔軟性を欠いている、といわざるをえない。だれも経験したことのないパンデミックを乗り切るには、なんらかの変更点が必要だ。多くのリーグが交代枠を5人に設定しているにもかかわらず、プレミアリーグは3人のままだ。12試合が延期（前述）され、多くの選手が体調を崩しているというのに、柔軟性だけではなく、危機管理能力にも欠けているのではないだろうか。

「新型コロナウィルスに感染した後、万全のコンディションを取り戻すのは難しい。スプリントを繰り返すと、息切れが激しいんだ」

マンチェスター・シティのケヴィン・デブライネも、みずからの経験をもとに語っていた。

コロナ禍の過密日程に、従来のルールを適用するなんてバカげている。プレミアリーグの上層部と放映権を持つメディアは、選手たちを守るための解決策を一日も早く講じるべきだ。FAカップの3、4回戦は再試合廃止、だけでは生ぬるい。

文：粕谷秀樹