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ディーン・ヘンダーソン
多くのメディが伝えているように、マンチェスター・ユナイテッドのラルフ・ラングニック監督は駆け引きを嫌う。
「エージェントの発言は無意味であり、興味もない」と発言し、移籍を示唆するアントニー・マルシャルをけん制した。オーナーのお気に入りといわれているものの、この1、2シーズンは鳴かず飛ばずだ。ラングニックの逆鱗に触れた場合は、「はい、さようなら」。ちなみにマルシャルは、セビージャとの急接近が噂されている。
「現時点でダビド・デヘアは世界一のゴールキーパーだ。しかし、プレミアリーグとチャンピオンズリーグ、そしてFAカップを闘い抜くためには、トップランクのゴールキーパーが3人は必要だ」
ラングニックはディーン・ヘンダーソンとトム・ヒートンの実力を認めている。公の席でお褒めの言葉をいただいたのだから、3選手ともにプライドがくすぐられた。ヒートンは35歳でCL初出場のチャンスも得ている。ラングニックに足を向けては寝られない。
だが、ヘンダーソンはエージェントを介さずに監督と直談判。退団する意思を伝えたという。
昨シーズン後半、デヘアから定位置を奪ったにもかかわらず、シーズン終了後に新型コロナウィルスに感染したり、負傷が相次いだりして、コンディションを大きく崩した。
一方、ライバルのデヘアはシーズンオフのトレーニングが功を奏し、今シーズンは完全復活を遂げた。GKに戦術的な交代はない。本稿執筆時点でヘンダーソンが出場したのは、CLとリーグカップが1試合ずつ。プレータイムはわずか180分だ。
このままでは商品価値が下がる。イングランド代表を率いるガレス・サウスゲイト監督の興味すらひけず、来年冬のカタール・ワールドカップに出場できなくなる。正GKジョーダン・ピックフォード(エヴァートン)をはるかにしのぐ才能を持っているにもかかわらず、だ。ヘンダーソンが移籍を希望するのは至極当然といって差し支えない。
もちろん、守備範囲の広さではヘンダーソンが上まわり、最終ラインの背後に生じたスペースをカバーする動きはスムーズだ。それでもラングニックはデヘアを「世界一」と称している(前述)。これがユナイテッドの序列だ。
一番手がデヘア、二番手にヘンダーソンが理想的な布陣と考えられる。年末からの過密日程、猛威をふるう変異ウィルス・オミクロン株などを踏まえると、ひとりでも多くのタレントを、とくにヘンダーソンのような名手は確保しておきたい。
ただ、駆け引きをしなかったヘンダーソンの意思に、ラングニックは敬意を表しているという。飼い殺しをよしとせず、ローン、もしくは“買い戻し条項”を付けた移籍を認めるのではないか、との情報も流れはじめた。
繰り返すが、GKは戦術的な交代のない特殊なポジションだ。カタール・ワールドカップも一年後に開催予定だ。ヘンダーソンは、闘いの場を求めている。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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