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劇的ゴール後にユニフォームを脱いで叫ぶロナウド
クリスチャーノ・ロナウドには感謝すべきなのだろう。
後半追加タイムに決勝点。マンチェスター・ユナイテッドに貴重な3ポイントをもたらしたのだから、さすがというしかない。ただ、チームのパフォーマンスは首を傾げる材料ばかりで、再三にわたるピンチを防いだGKダビド・デヘアただひとりが、先発メンバーでは及第点以上の出来だった。
チャンピオンズリーグ第2節、ユナイテッドは本拠オールド・トラッフォードにビジャレアルを迎え撃った。
右サイドが狙われた。出場停止のアーロン・ワン=ビサカに代わって出場したディオゴ・ダロは、一対一で脆さを露呈する。メイソン・グリーンウッドが帰陣を怠たり、中盤センターの対応も遅れたことから、フィルターがまったくかからないケースも多々あった。
しかし、ダロは一対一が軽く、杜撰で、DFとしての仕事はほとんどできていなかった。ボールコントロールの際にルックアップしているため、ポゼッションを失いはしなかったものの、DFの基本業務は守りである。
それでもオーレ・グンナー・スールシャールは、なんのプランも講じなかった。覇気のない表情で、マイケル・キャリック、キーラン・マッケンナ両コーチとなにやら話している。ベンチにはエリック・バイリーが控えていたのだが……。
とにかくスールシャールは、戦況に応じて動かない、動けない。決勝点を決めたとはいえ、この日のC・ロナウドは精彩を欠いていた。ポゼッションの際に足を止め、攻撃リズムの停滞を招いてもいる。
機を見るに敏の名将なら、C・ロナウドに代えてエディンソン・カバーニ投入。前線の動きと質に喝を入れたに違いない。事実、カバーニ投入後は攻撃にリズムが生まれ、80分にはみずから惜しいヘディングシュートを放っている。
そして冒頭に触れたC・ロナウドの決勝点も、カバーニの泥臭いボール奪取がそもそものスタートだった。
また、選手交代ではスタッフがボードの扱いに戸惑い、カバーニとジェシー・リンガードの投入が5分近くも遅れている。大事な大事なCLで、なにをチンタラしているのか!
負けても文句はいえず、引分けでよしとすべき一戦で勝利を、しかも後半追加タイムの劇的なドラマでモノにした。ユナイテッドは波に乗れるかもしれない。
しかし、運動量と守備意識には期待できないC・ロナウドの使い方は? 貢献度の高いカバーニ、好調を維持するリンガードを先発に起用すべきではないのか、レギュラーDFが欠場した場合の対応策は……。各方面で指摘される課題が、改めて浮き彫りにされたビジャレアル戦だった。
「これぞオールド・トラッフォード! これぞチャンピオンズリーグ! ヤングボーイズ戦は酷い出来だったが、きょうの勝ち方素晴らしい。長いシーズン、アップダウンは付きものだからね」
スールシャールはお気楽だった。彼は方法論だけでなく、危機感すらも持っていない。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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