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メッシのいないバルセロナで益々活躍が期待されるペドリ(左)
「負債総額は13億5000万ユーロ(約1742億円)。絶望的な状況だ」
バルセロナのジョアン・ラポルタ会長が、現地時間16日の記者会見で財政が火の車であることを明らかにした。
ジョゼップ・マリア・バルトロメイ前会長による杜撰すぎる経営は、リオネル・メッシをパリ・サンジェルマンに手放したり、ジェラール・ピケが大幅な減給を受け入れたりしてもカバーできないほど、クラブの財政を追い詰めていた。
さらに、『楽天』とのスポンサー契約も今シーズンかぎりで満了する。現時点で契約更新の噂はなく、一部主力の人種差別発言によって新しいスポンサーも開拓しづらくなっている。『楽天』とは2018年から総額3億2400万ドル(約356億4000万円)の4年契約を交わしていたが、コロナ禍で同等の大型支援を得ることは至難の業だ。
財政の不安は、強化プランにも大きな影響を及ぼす。ある選手を現場が欲しても、上層部はない袖は振れない。買いたいのなら売却を優先し、資金を捻出する。経済的なアドヴァンテージを握るプレミアリーグ勢には太刀打ちできず、バルセロナにカネがないことを知るクラブは、市場の動きを見ながら交渉で優位に立とうとする。強化が進むとは思えない。
また、いくつかの高額オファーが届いたとされるウスマーヌ・デンベレは、移籍するのか契約更新するのか、あやふやな態度で周囲を煙に巻いている。さらにアントワーヌ・グリーズマンとフィリッペ・コウチーニョは、高すぎる年俸がネックとなって買い手が見つかっていない。
ラポルタ会長は、「今後2年以内に健全的な財政を取り戻す」と語ったが、具体的なプランは提示できなかった。
したがって残り2週間となった移籍市場でも、バルセロナをめぐる大きな動きはないと考えられる。売却対象の一番手といわれてきたマーティン・ブライトワイトも、現有勢力を踏まえると確保しておくべきだ。レアル・ソシエダとの開幕戦に招集されなかったミラレム・ピャニッチとサミュエル・ウムティティは、換金対象なのだろうか。
もちろん、ペドリとフランキー・デ・ヨングは非売品だ。クラブの財政を助ける巨額のオファーが届いたとしても、バルセロナの未来を売るような愚を犯してはならない。彼らまで失うと、元も子もなくなる。
残念ながら、ひとつの周期が終焉を迎えた。メッシの退団、絶望的な財政と、バルセロニスタの感情には怒りと悲しみが渦を巻いているはずだが、再スタートのために神様が与えた大きな試練と受け止めるしかない。
ヨハン・クライフ、ディエゴ・マラドーナ、ジョゼップ・グアルディオラ、カルレス・プジョル、チャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、そしてメッシ……。フットボールの歴史に残る偉大な選手を数多く輩出した名門バルセロナは、きっといつか立ち直る。
BARCELONA REBORN──。そのときを楽しみに待とう。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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