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PKに向かうイングランド代表 キャプテン ハリー・ケイン
「イギリス政府に対して迅速に行動し、厳罰の導入を要請する」
「ソーシャルメディア企業は、プラットホームから人種差別を徹底的に排除するための責任を取らなければならない」
「起訴につながる投稿を収集し、忌まわしい人種差別を全面的に駆逐しなくてはならない」
FAが毅然とした態度に出た。筆者のはらわたも煮えくり返っている。
EURO20決勝のPK戦で失敗したマーカス・ラシュフォード、ジェイドン・サンチョ、ブカヨ・サカのSNSに、人種差別的な投稿が確認された。敗れたとはいえ、1966年に地元開催したワールドカップ以降、メジャー大会では55年ぶりのファイナリストである。「よくやった」とか「来年のワールドカップにつながる」と、前向きに評価してしかるべきだ。
イングランド代表の3選手を誹謗中傷した連中には厳罰を科し、差別が人間に値しない愚行であることを分からせなければならない。
さて、EURO決勝史上最速の1分57秒に生まれたルーク・ショーの先制ゴールにより、イングランドは必要以上に守備的になった。「もう1点」ではなく、「このゴールを守り続けなくては」という意識が勝ち過ぎていた印象が強い。ハリー・ケインはプレーする位置が終始低く、イタリアGKジャンルイジ・ドンナルンマはPK戦を迎えるまで、ほとんど仕事がなかった。
しかし、ガレス・サウスゲイトが「選手たちは可能な限りの全力を尽くしてくれた。PK戦の結果はすべてわたしの責任だ」と語り、キャプテンのケインも「のるかそるかの一大事に、勇気をもってPK戦に臨んだ3人は称賛されてしかるべきだ。彼らを中傷するような人間はイングランド・サポーターではない」とかばっていた。イングランド警視庁も捜査に乗り出し、この件に関わったすべての者を徹底的にあぶり出すという。
それにしても、愚行に及んだ者はイングランドの奮闘に胸を熱くしなかったのだろうか。
守備陣はセットプレー以外で失点していない。1ゴール3アシストのショーは、個人的に大会MVPだ。カルヴィン・フィリップスのボール奪取能力は世界を驚かせ、メイソン・マウント、フィル・フォーデン、ジャック・グリーリッシュの技巧は、間違いなく世界水準だった。
今回は負傷のために代表から漏れたメイソン・グリーンウッド、トレント・アレクサンダー=アーノルドも、同世代の活躍は刺激になったに違いない。そのレベルを上げ、選手選考にサウスゲイト監督が嬉しい悲鳴を上げる姿を、想像しただけでもワクワクする。
代表チームがEUROで準優勝し、チェルシーとマンチェスター・シティがチャンピオンズリーグでヨーロッパのテッペンを競った。マンチェスター・ユナイテッドもヨーロッパリーグのファイナリストだ。
コロナ禍でもイングランド・フットボールのために闘い続けた彼らに、心からの尊敬と拍手、そして感謝の意を捧げるのが人としての常識だ。いかなる理由があろうとも、差別を許してはならない。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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