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サウスゲイト監督
2000年代初頭から後期にかけて、イングランドはワールドカップでもヨーロッパ選手権でも、、優勝候補の一角に挙げられていた。デイヴィッド・ベッカム、リオ・ファーディナンド、スティーヴン・ジェラード、フランク・ランパード、アシュリー・コール……。数多くのスター選手を擁していたのだから当然だ。
しかし、周囲の期待を裏切り続ける。
「クラブ間のライバル意識が激しすぎて、代表チームとしてのまとまりを著しく欠いていた」(R・ファーディナンド)
08年1月から約4年に渡って監督を務めたファビオ・カペッロも、「異常なほどの緊張感だった」と当時を振り返っている。
いま、イングランドのムードはすこぶる良い。準決勝のデンマーク戦でハリー・ケインが決勝ゴールを決めたとき、かつてないほどの一体感にあふれていた。フィル・フォーデンの顔が興奮で紅潮していた。ジョーダン・ヘンダーソンが殊勲のヒーローを手荒に祝福し、多くの選手が歓喜に折り重なっていく。
また、試合終了後はサポーターとともに『スイートキャロライン』を大合唱。ウェンブリーがひとつになった。
クラブ間のライバル意識がなくなったわけではないだろうが、異常なほどの緊張感をもたらすような険悪な関係ではない。チェルシーのメイソン・マウントとウェストハムのデクラン・ライスはだれもが知る親友同士だ。ヘンダーソン(リヴァプール)やケイン(トッテナム)といったチームリーダーはロッカールームの政治に興味がなく、ムードメーカーとしてもひと役買っているという。
元イングランド女子代表のカレン・カーニーも、「まるで魔法を見ているみたいだった。EURO20のイングランド代表は、チームというより “家族” ね」と、興奮を抑えきれない様子だった。
1966年に地元開催したワールドカップ以降、メジャー大会では55年ぶりの決勝進出である。冒頭に挙げた5選手をはじめ、ガリー・リネカーやマイケル・オーウェン、ポール・スコールズ、ウェイン・ルーニーといった名手も届かなかった栄冠が、目前に迫ってきた。
決勝で相まみえるのはイタリアだ。彼らもまたエゴがなく、試合終了後にロベルト・マンチーニを囲む円陣からはチーム一丸の姿勢がひしひしと伝わってくる。フェデリコ・キエーザ、ロレンツォ・インシーニエ、ジョルジーニョ、レオナルド・ボヌッチなど、要所要所にすぐれたタレントを擁する好チームだ。
しかし、ガレス・サウスゲイト監督はこう言った。
「準決勝では心身ともにダメージを負ったが、イタリア戦に向けて万全の体制を整えなければならない。決勝は勝つためにある!」
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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