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的に囲まれながら強引に突破を試みるエムバペ
オリヴィエ・ジルーは不平・不満を口にするタイプではない。所属するチェルシーでもつねにチームファーストで、試合中はもちろん、ロッカールームや練習場における立ち居振る舞いを、多くの若手が手本にしている。
「試合に出られなくても黙々と調整しているし、いつも気遣ってくれる」(メイソン・マウント)
「的確なアドバイスで助けてもらっている。彼と話すだけでホッとするんだ。尊敬できる大先輩だね」(リース・ジェイムズ)
しかしいま、ジルーの発言が物議をかもしている。EURO2020の開幕を目前に控えた6月8日、みずからの2ゴールなどでブルガリア(親善試合)を3-0で退けた後、彼は不満を口にした。
「ペナルティーボックス内の問題を解決するため、最大限の努力はしたつもりだ。それでもなぜかパスが送られてこない。もっともっと連携を磨く必要がある」
だれかを責めたわけではなさそうだが、ジルーにしては珍しい物言いだけに、キリアン・エムバペは敏感に受け止めてしまったようだ。
「俺に文句があるのか!?」
ブルガリア戦では独善的なプレーが散見され、メディアからも批判されていたエムバペは怒り心頭。フランス代表のディディエ・デシャン監督に対し、「公式見解を発表するための記者会見を開いでもらえないでしょうか」と訴えたという。もちろん、デシャン監督が受け入れるはずがない。
「ジルーにはジルーの、エムバペにはエムバペの考え方がある」と語り、早期決着を図ろうとしている。
多くのメディアが “内紛勃発” と報じている。ブルガリア戦後のムードは、当然のように芳しくないという。
たしかにフランス代表は、内輪揉めを繰り返してきた。監督と主力の対立が頻繁に起き、EURO12ではジェレミー・メネーズがウーゴ・ロリスを公然と批判した。サミア・ナスリの恋人による度が過ぎたSNSに、攻撃の対象となったデシャン監督が訴訟に踏み切ったこともある。記憶に新しいところでは、カリム・ベンゼマが映像をもとに、マテュー・バルブエナを脅迫する異常事態まで発覚した。
ジルーの言い方に問題があったのか、エムバペが大げさに捉えただけなのか、意見は分かれるところだろう。ただ、単なるボタンの掛け違いが修復不可能なズレに至るケースは少なくない。おとなの対応が望まれる。
18年ワールドカップの優勝メンバーが熟成し、キングスレー・コマン、ジュル・クンデ、プレスネル・キンペンベといった若手も台頭。現在のフランス代表は、だれもが認めるEURO20の優勝候補だ。完成度、個のクオリティー、経験値などが抜きんでている。かのアルセーヌ・ヴェンゲルも、「フランス代表は特別すぎる優勝候補」と絶賛していた。
内紛で敗れ去るのだとしたら、あまりにも惜しい。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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