ジダンやペップ、クロップでもトップ4に導ける保証はない

ルカクと喜び合うコンテ監督（右）

「次期監督の最有力候補に浮上」（BBC）
「交渉が本格化」（INDEPENDENT）
「公式発表が間近に迫る」（FOOTBALL LONDON）

イギリスのメディアによると、トッテナムの新監督はアントニオ・コンテで間違いなさそうだ。20－21シーズンまでユヴェントスのフットボール・ディレクターを務めていたファビオ・パラティチの招聘も検討中。8月14日に開幕する2021－22シーズンは、カルチョ色が濃くなるに違いない。

トッテナムのダニエル・リヴィー会長にとって、コンテがフリーランスになったことは大きかった。20－21シーズン、彼はインテル・ミラノを11シーズンぶりのスクデットに導き、来るべく新シーズンもカルチョ・イタリアーノの名門を率いるはずだった。

ところが、財政的な逼迫で強化よりも経費削減を優先。「主力の放出で7000万ポンド（約105億円）前後を補てんする」と、インテル上層部はコンテに伝えたという。その結果、5月26日に双方合意のうえで契約解除。したがって、違約金は発生しない。

ただし、トッテナムもカネは使えない。ユヴェントスでもチェルシーでも、コンテは多額の移籍金をもとに強化してきたが、ない袖は振れない。他リーグに比べれば裕福なプレミアリーグでも、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済的ダメージは大きかった。新チームの最重要課題は現状維持であり、大幅な戦力アップは考えにくい。

ましてトッテナムは、ハリー・ケインの流失が避けられそうもない。彼はタイトルを欲している。コンテはスクデット5回、プレミアリーグ1回という優勝請負人だが、元監督のジョゼ・モウリーニョも似たような触れ込みだった。

さらにウーゴ・ロリスも「EURO終了後に身の振り方を決める」と語り、トッテナム・サポーターの不安を増幅している。

だれが新監督に就任しても難しい状況だ。レアル・マドリーを退任したジネディーヌ・ジダンも、ケイン不在のトッテナムをトップ4に導ける保証はない。マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラしかり、リヴァプールのユルゲン・クロップしかり……。

とはいえ、コンテとともにパラティチも招き入れるのなら、補強はスムーズに進むかもしれない。リヴィー会長は実務でらつ腕をふるうものの、選手の良し悪しを見分ける能力はからきし欠ける。ライアン・セセニョン、タンギ・エンドンベレ、マット・ドハーティ、カルロス・ヴィニシウスなど、近年の補強例は微妙が過ぎる。

一方、パラティチはユーヴェ所属時に移籍市場で太いパイプを築いてきた。コンテの意向に沿う選手を発掘する公算は大きい。

ケインが離脱するとすれば大きすぎるダメージだ。しかし彼の移籍金とパラティチの人脈により、年間15～20ゴールが期待できるストライカーと、近代フットボールが可能なGKとDFを獲得する可能性も十二分にあるはずだ。

いずれにせよ、再建の道のりはたやすくない。この先、リヴィーとパラティチはどのような補強、人員整理を推し進めるのだろうか。鎌田大地（フランクフルト）に興味津々とは真実なのか。新生トッテナムは、いろいろな意味で注目されている。

文：粕谷秀樹