アンチェロッティの後任はハウかポッターか、あるいはヌーノか

カルロ・アンチェロッティ

いわゆる “サプライズ人事” だ──。

現地時間6月1日、レアル・マドリーはジネディーヌ・ジダンの辞任で空席になっていた監督のポストに、カルロ・アンチェロッティを起用した。6年ぶりの復帰である。

マドリーBの監督を務めているラウール・ゴンサレス、レアル・ソシエダBを率いるシャビ・アロンソといったOBではなく、EURO20終了後にドイツ代表監督の座を去るヨアヒム・レーヴでもなく、アンチェロッティを連れてくるとは意外な人選だ。

当然、夏の補強も見直される。イスコやマルセロ、ラファエル・ヴァランヌなど、退団濃厚と伝えられた選手が翻意するかもしれない。久保建英の将来にも少なからぬ影響を及ぼすだろう。6月30日で契約が切れるセルヒオ・ラモスに、なんらかの条件が提示される可能性もないとはいえない。

また、6年前のチームを知るトニ・クロース、ルカ・モドリッチ、ダニ・カルバハル、カリム・ベンゼマ、ルカス・バスケスなども、状況が一変する様相を呈してきた。トッテナムがローンの延長に難色を示しているガレス・ベイルを、アンチェロッティはどのように評価しているのだろうか。

さて、アンチェロッティを奪われたエヴァートンは大騒ぎだ。双方が合意した契約解除であり、相手がマドリーでは結果が目に見えている。スペインの巨頭からオファーが届いた瞬間、負け戦とあきらめるしかなかった。

20－21シーズンは開幕4連勝。ヨーロッパのコンペティションに手が届かなかったとはいえ、ドミニク・カルヴァート＝ルーイン、トム・デイヴィス、ベン・ゴドフリーといった若者の才能に火をつけ、古豪復活の基盤を築いたのは紛れもなくアンチェロッティだ。後任の人選は非常に難しい。

イギリスの衛星テレビ局『sky sports』は、「ウェストハムのデイヴィッド・モイーズが8年ぶりに復帰するのではないか」と報じていた。いま、ウェストハムとモイーズは契約更新の交渉が順調に進んでいるという。

前ポーツマス監督のエディ・ハウ、19年5月からブライトンを率いるグレアム・ポッター、20－21シーズン限りでウォルバーハンプトンの指揮官から退いたヌーノ・エスピリト・サントスなど、イギリスのメディアは数人の候補者をあげ、なかにはスティーヴン・ジェラード（現レンジャーズ監督）というタブーに触れるウェブサイトもあった。かつて、リヴァプールの “アイコン” だった男が、エヴァートンの監督になるはずがない。

パリ・サン・ジェルマンのマウリシオ・ポチェッティーノは、ラ・リーガよりもプレミアリーグ復帰に重きを置いている。強化よりも経費削減を優先した上層部に嫌気が差し、インテル・ミラノとの契約を解除したアントニオ・コンテは、分厚い選手層のクラブを物色中だ。

やはりハウ、ポッター、ヌーノのなかから選ばれるのだろうか。イタリア路線を踏襲するのなら、マウリツィオ・サッリという選択肢も浮上してくる（ラツィオが急接近とも……）。昨年8月にユベントスを解任された後はフリーランス。契約解除金などは発生しない。

いずれにせよ、エヴァートンは一刻も早く新監督を決めなければならない。人事担当の忙しい夏が始まった。

文：粕谷秀樹