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4月21日の水曜日に、東京オリンピック・サッカー競技の組分け抽選がスイス・チューリヒのFIFA本部で行われる。ヨーロッパ中部標準時間午前10時、日本時間の17時からだ。
オリンピック参加国は男子が16か国、女子が12か国で、男子は4チームずつ4つのグループ(A〜D)、女子は4チームずつ3つのグループ(E〜G)に分けられ、男子は各グループの上位2チームずつが準々決勝に進み、女子の場合は各グループの2位に加えて、3位チームのうち成績上位の2チームを加えた8チームが準々決勝に進出する。
さて、組分けの手順はワールドカップの組分け抽選と同じ、プラスティックのボールの中からチーム名が書かれた紙が出てくるというお馴染みの方法だ。男子は4チームずつ4つ、女子は3チームずつ4つのポットに振り分けられている。そして、ワールドカップと同じように、同じ大陸のチームは同じグループには入らない。
男子の場合、ワールドカップと違うのはポット分けだ。
オリンピックの男子サッカーは23歳以下の大会だ(東京大会は開催が新型コロナウイルス感染症の拡大のために1年延期になったため、今回に限って24歳以下になった)。
そのため、年齢制限のないフル代表のランキングが使えないということで、過去5回のオリンピックの成績(合計勝点)によってポット分けがなされている。「過去5回」というと2000年のシドニー大会以来ということになる。
各大会の優勝、準優勝および日本チームの成績を振り返っておこう。
・2000年(シドニー)
1:カメルーン 2:スペイン 日本:ベスト8
・2004年(アテネ)
1:アルゼンチン 2:パラグアイ 日本:GL4位
・2008年(北京)
1:アルゼンチン 2:ナイジェリア 日本:GL4位
・2012年(ロンドン)
1:メキシコ 2:ブラジル 日本:ベスト4
・2016年(リオデジャネイロ)
1:ブラジル 2:ドイツ 日本:GL3位
各大会で獲得した勝点は、前回の2016年大会はそのままの数値で計算されるが、2012年大会の勝点には0.8、2008年大会には0.6……2000年は0.2を乗じた数字が加算される。直近の大会が重視されるというわけである。
日本は5大会すべて出場している(1996年のアトランタ大会から、東京大会で7大会連続出場)のは立派だが、残念ながらグループリーグを突破したのは3位決定戦で韓国に敗れて4位となった2012年ロンドン大会だけで、あとはすべてグループリーグで敗退している。
この計算の結果、ポット1に入ったのは開催国の日本のほか、前回優勝のブラジルと過去5大会で2度優勝しているアルゼンチン、そして、2012年に銅メダル、2016年にもベスト8進出を果たした韓国の4チームとなった。
ポット分けは下記の通りだ。
・ポット1:日本、ブラジル、アルゼンチン、韓国
・ポット2:メキシコ、ドイツ、ホンジュラス、スペイン
・ポット3:エジプト、ニュージーランド、コートジボワール、南アフリカ
・ポット4:オーストラリア、サウジアラビア、フランス、ルーマニア
ロシア・ワールドカップで優勝し、フル代表ではFIFAランキング2位と上位にいるフランスがポット4に入っているあたりが、“オリンピックならでは”である。
さて、日本代表は開催国グループAに入ることが決まっているため、ブラジルやアルゼンチンと同じ組にならないが、逆に同じアジア大陸のチームと同一組に入らないというルールがあるため、ポット4のオーストラリア、サウジアラビアが除外され、フランス、ルーマニアのどちらかが同じ組に入ることになってしまう。ポット4のフランスやポット2のメキシコを引き当ててしまったりしたら、グループAは一気に“死のグループ”になってしまう……。
もっとも、オリンピックの場合は名前だけではチーム力は判断できない。ヨーロッパではオリンピックのサッカーは重要視されていないので、24歳以下の最強メンバーがそろうわけではない。たとえば、フランスのキリアン・ムバッペは22歳で、スペインのアンス・ファティは18歳だからオリンピック出場資格があるわけだが、彼らがオリンピックに参加するのは難しいだろう。
なにしろ、2021年夏にはこちらも延期になったEURO(ヨーロッパ選手権)が予定されているのだ。どう考えても、EUROに出場した選手をオリンピックにも招集することをクラブが許可するとは思えない。オリンピックの決勝戦は8月7日であり、ヨーロッパのクラブにとっては2021/22シーズン開幕直前なのだ。そんな時期に猛暑の日本で戦って疲労を蓄積してしまってはシーズンでのパフォーマンスに悪影響を与えることは目に見えている。
従って、日本としては相手の名前にリスペクトを払いすぎる必要はない。なにしろ、先日の親善試合では優勝候補の一角アルゼンチンと互角に渡り合ったのだから……。
なお、ワールドカップなどではグループAに入ると大会後半の日程に余裕があるので有利になるが、オリンピックの場合は、準決勝から決勝の間を除いてすべての試合が中2日の連戦という超過密日程なので日程上のアドバンテージはない。ただ、日本はグループAのナンバー1の位置に入るので、グループリーグの間の移動距離は短くてすむ(グループリーグ中は東京 → 埼玉 → 横浜)。
ちなみに、女子の組分け抽選も男子と同時に行われるが、こちらはフル代表による大会のなのでポット分けはFIFAランキング順で行われることになっている。しかし、FIFAランキング2位のドイツと4位のフランスは前回の女子ワールドカップの成績によって東京大会の出場権を失っているのが注目点だろう。従って、ポット1は日本のほか、アメリカとオランダが入っている。
また、女子の場合も日本は開催国としてグループEのナンバー1のポジションに入ることがすでに決まっている。少なくともグループリーグではランキング首位のアメリカと3位のオランダとは当たらないわけだ。また、グループEに入ると初戦と第2戦を涼しい札幌で戦うことができるのは、大きなアドバンテージとなるだろう。
7月開幕のオリンピックまではすでに100日を切っている。本当に開催できるのか、予断を許さない情勢だが、とりあえず21日のドローには注目したい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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