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ランパード監督
手元の資料が正しければ、引分けを挟まずにプレミアリーグで3連敗したチームが、テッペンに立った例は一度もない──。
いま、チェルシーが二度目の危機にさらされている。
第11節、エヴァートンに0-1、続くウォルヴァーハンプトン戦も1-2の敗北を喫したが、13節のウェストハム戦で3-0の勝利を収めてひと息ついた。ところが、16節のマンチェスター・シティ戦を1-3で落とし、17節はフラム戦、18節はレスター戦だ。難しい相手が続く。
「降格圏に沈むフラムなら」と油断してはいけない。直近4試合はすべてドローだが、このなかには首位リバプールから奪った貴重な1ポイントが含まれている。アデモラ・ルックマン、イバン・カバレイロ、ボビー=デコルバ・リードといった攻撃陣は、なかなかの曲者揃いだ。
そしてレスターは完成度でチェルシーを上まわり、内転筋を痛めていたチューラル・ソヨンジュの名が故障者リストから消え、昨年3月から戦列を離れているリカルド・ペレイラも、いよいよ復帰間近と伝えられている。チェルシーにとって、かなり厄介な相手だ。
しかもオーナーのロマン・アブラモヴィッチは、読者の皆さんもご存知のように辛抱強くない。不調だったはずのアーセナルに敗れたり、シティとの実力差が露呈したりした直近の試合から、性急に答を出すリスクは十分にある。
フランク・ランパード監督解任か──。
名うてのフリーランスが集う新興メディア『The Atletic』に、考えられなくはない見出しが躍っていた。
この夏の補強は、ランパードの意を汲んで勧められた。彼のリクエストにより、ティモ・ヴェルナーとカイ・ハヴァーツ、ハキム・ジィエフなどを獲得した。「新戦力がフィットするまで時間がかかる」は現場の論理であり、上層部の答は「いったい、いくら使ったと思っているんだ!? だれの意見を優先したのか、覚えてるのか!?」となる。
また、アブラモヴィッチが2003年に買収した後、チェルシーは13人の監督が起用されていて、ランパードの平均勝点は1・67。この数字はロベルト・ディマテオの1・83、クライディオ・ラニエリの1・82、アンドレス・ビラス=ボアスの1・70にも及ばず、最下位に沈んでいる。
さらに『The Atletic』は、「一部の主力とランパードは緊張状態にある」と、内部分裂を匂わせていた。ルイス・フェリペ・スコラーリ、ジョゼ・モウリーニョ、アントニオ・コンテなど、主力と対立した監督の行く末は、改めていうまでもない。上層部は、パリ・サンジェルマンから解雇されたばかりのトーマス・トゥヘルを、新監督候補にリストアップしたという。
一か月ほど前、リーズを3-1で破り、チャンピオンズリーグでセビージャに四発食らわせたときのチェルシーは強く、攻撃的なフットボールは各方面で絶賛された。ところが、その後プレミアリーグで1勝1分4敗と急降下し、ランパードの立場までもが危うくなるとは……。
新年早々、チェルシーに不穏な空気が流れはじめている。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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