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相手に倒されるポグバ
「ポール・ポグバはマンチェスター・ユナイテッドの選手だ」
一週間ほど前、ユベントスのチーフ・フットボール・オフィサーを務めるファビオ・パラディチはこう言った。「来年1月、もしくは夏にポグバの復帰はあるのか」と食い下がるメディアを、あっさりかわしている。
ロドリゴ・ベンタンクールは成長著しく、2シーズン目を迎えたアドリン・ラビオがチームにフィットしてきた。アルトゥールとウェストン・マッケニーもアンドレ・ピルロ監督のお眼鏡に適い、アーロン・ラムジーもケガさえしなければ十分な戦力だ。ポグバの居場所はあるのだろうか。
また、ポグバが「憧れのチーム」と公言したレアル・マドリーも、現時点の第一ターゲットはキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)だ。
しかもコロナ禍により、ユーベもマドリーも緊縮財政を余儀なくされている。一説によるとポグバの市場価値は7200万ポンド(約100億円)、週給は29万ポンド(約4000万円)。コストの面でも獲得を見送らざるをえない状況だ。いまのところ、ユナイテッド残留しか道はない。
ただ、今シーズンもポグバは苦しんでいる。11月7日現在、公式戦11試合の出場時間は527分。新型コロナウイルス陽性反応後のコンディショニングに戸惑っているとはいえ、本来のパフォーマンスからは程遠い。7節のアーセナル戦でも無駄なファイルでPKを献上。0-1の敗北を招く張本人になった。
もちろん、ポグバをスケープゴートにするつもりはない。ユナイテッド着任から二年近くが過ぎているにもかかわらず、基本陣形を見いだせずにいるオーレ・グンナー・スールシャール監督にも責任はある。
彼は4-2-3-1にこだわり、この配置に選手を当てはめる。ポグバは中盤センターに起用されるケースが多く、DFラインの前でもボールをキープするためにプレスの餌食になりやすい。こうした事実を憂えたフランス代表のディディエ・デシャン監督は、一年ほど前から同じ論調を繰り返している。
「ポグバの適性は4-3-3の中盤左インサイド」
たしかにフランス代表のポグバは心地よくプレーしている。ユナイテッドでも右インサイドにブルーノ・フェルナンデス、アンカーにドニー・ファン・デ・ベークという並びが可能だ。シーズン序盤に試すべき陣形ではあるのだが……。
気分屋で好不調の波が激しく、守備面では軽かったり、緩かったりするポグバだが、違いを創りだせる稀有なタレントだ。ファイナルサードの崩しとフィニッシュこそが、最大の持ち味である。
前述したプレスの餌食に関しても、バリー・マグワイアとヴィクトル・リンデレフの両センターバックが相手FWに寄せられただけでパニック。苦しまぎれにポグバに配するとすでに囲まれている、というシーンも少なくはない。
ユナイテッド復帰後、ポグバは期待を裏切り続けている。しかしスールシャールも、フランス人MFが持つ特大のポテンシャルを活かしていない。監督が考え直すか、新しい指揮官を招聘すべきか。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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