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モイーズ監督
世界最大のプロレス団体『WWE』の幹部で、全盛期には “DーGeneration X” なるユニットで大人気を博したトリプルHが、ウェストハムに言及した。
「デクラン・ライスは残留するべきだ。自分自身でなにかを築き、君をサポートしてくれたサポーターのために、ウェストハムでやりとげることがあるんじゃないか」
トリプルHはハンター・ハースト・ヘルムスリーの略で、英国貴族の末裔という設定だ。本名はポール・マイケル・レヴェック。アメリカ・ニューハンプシャー州出身。ウェストハムとのつながりはない。なぜ、ライスの残留を希望したのだろうか。
もっとも、トリプルHの心配は杞憂に終わる公算が大きくなってきた。ライスを狙っていたチェルシーの補強は順調に進み、残るターゲットはGKだけだ。マンチェスター・ユナイテッドもアヤックスからドニー・ファンデベークを獲得し、中盤の増員は完了している。
また、マンチェスター・シティはもともとライスに興味がなく、トッテナムとアーセナルは資金不足だ。推定市場価格3750万ポンド(約52億5000万円)の有望株には手が出せない。
こうして、ライス流出の危機は去った。ハマーズ・サポーターも、意気揚々と新シーズンの開幕を迎えたいところだが……。
◆第1節:ニューカッスル(ホーム)
◆第2節:アーセナル(アウェー)
◆第3節:ウォルヴァーハンプトン(ホーム)
◆第4節:レスター(アウェー)
◆第5節:トッテナム(アウェー)
◆第6節:シティ(ホーム)
◆第7節:リヴァプール(アウェー)
7連敗も考えられる地獄のスケジュールだ。昨シーズン、7チームとの対戦は1分13敗。得点11・失点36。ニューカッスルを除く6チームにダブルを食らっている。
したがってデイヴィッド・モイーズ監督は、アンカーのマーク・ノーブルをトップ下に起用したり、最終ラインが上がらない5-4-1だったり、超守備的な布陣で臨むのではないだろうか。実際、昨シーズンは守備偏重のプランがプレミアリーグ残留の決め手となった。
しかし、ハマーズ・サポーターは弱腰を嫌う。シーズン終盤ならいざ知らず、開幕からガードを固めてパンチを出さないようなスタイルに、痛烈なブーイングを浴びせるだろう。カウンター主体は当然だとしても、フェリペ・アンデルソンやマヌエル・ランシーニをはじめとするすぐれたタレントを活かす術を、モイーズは持ってない。当然、サポーターには支持されない。
各種ブックメーカーも、解任候補第一号にモイーズを挙げていた。監督としての限界を悟られた、といって差し支えない。昨シーズン、ウルヴズのヌーノ・エスピリト・サント、シェフィールドのビリー・ワイルダー両監督は、限られた人員でクラブを上位に導いた。彼らのような洞察力も、モイーズは持っていない。
嗚呼、“ないないづくし” のモイーズ。ブックメーカーの予想を借りるまでもなく、早期解任は十分にありうる。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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