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アレクシス・サンチェス
アレクシス・サンチェスの発言は耳障りがよくない。
「マンチェスター・ユナイテッドには少年時代から憧れていたので、移籍が決まったときは “やった、夢がかなうぞ” ってドキドキした。でも、練習初日から嫌な雰囲気だった。いますぐ契約を打ち切り、アーセナルに戻れないものか、エージェントに相談したんだよ」
彼がプレーしていた当時のユナイテッドはムードが悪かった。サー・アレックス・ファーガソンの想い出を必要以上に引きずり、新しい一歩を踏み出す勇気に欠けていた。サンチェスに限らず、ロメル・ルカク、ヘンリク・ムヒタリアン、メンフィス・デパイなど、期待された新戦力は周囲の期待をことごとく裏切っている。
当然、ピッチ内でも精彩を欠き、日本時間の深夜にキックオフされたユナイテッドの試合には、睡魔との戦いもついてまわった。
しかし、すべての非がクラブ側にあるのだろうか。どのような状況でも、アンデル・エレーラは労を惜しまなかった。だからこそサポーターに支持されたのだ。ユナイテッドに所属していた当時のサンチェスは、懸命に闘っていない。
アーセナルに戻る? 戦術をめぐってDF陣とたびたび衝突。チーム内で孤立していたサンチェスが歓迎されるはずがない。みずからを正当化したいがために、かつての所属クラブを批判したり、利用したりするのはお門違いだ。
なぜ、極度の不振に陥ったのか。その間のパフォーマンスは56万ポンド(約7840万円)ともいわれる週給にふさわしかったのか。自分の足もとを見つめ直すのが、人間のマナーである。
ユナイテッドに責任の一端はあるとしても、前述したエレーラ、ヴィクトル・リンデレフ、マーカス・ラシュフォードなどは、心のこもったプレーでサポーターの信頼を勝ち得た。アーセナルOBのレイ・パーラーも、「サンチェスはユナイテッドにフィットする努力を怠った。定位置を確保するためにアピールしたようには見えなかった」と、苦言を呈している。
22試合に出場し、4ゴール・8アシスト。負傷で大きく出遅れたことを踏まえると、昨シーズンは上々の出来だった。インテル・ミラノでは貴重な戦力であり、今シーズンはフル稼働が期待されている。ならば後ろを振り向かず、インテルのためにすべてを注がなければならない。
アーセナルやユナイテッドでも、練習態度の悪さや遅刻の多さを指摘された。ユナイテッドのオーレ・グンナー・スールシャール監督が「腐ったミカン」と表現したのは、十中八九サンチェスだ。
したがって、売り言葉に買い言葉。サンチェスにも言い分はある。しかし、言いたいヤツには言わせておけばいい。口喧嘩なんかおとなの範疇ではない。心身ともに上向いているいまこそ、ピッチに専念すべきだ。
そしてふたたび不遇をかこっても周囲に愚痴らず、コンディション調整に励むことだ。論争を仕掛けたいのなら、ユニフォームを脱いだあとでも遅くはない。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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