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前半戦を7勝7分け5敗で折り返したとき、マンチェスター・ユナイテッドが3位でシーズンを終えるとは、頭の片隅にも考えていなかった。チャンピオンズリーグの出場権を獲得できるとしたら、苦手とするスペイン勢と当たらずにヨーロッパリーグ決勝まで進めばひょっとすると、程度にしか評価していなかった。
全体的に運動量が少なく、攻守ともに不安定だった。クリスタルパレス、ウェストハム、ニューカッスル、ボーンマス、ワトフォードに足をすくわれ、シェフィールドやアストンヴィラにも勝てない。再建は茨の道か。しかし20年1月29日、事態は急変する。
“救世主” ブルーノ・フェルナンデス降臨──。
状況判断にすぐれ、アイデアも豊富だ。受け手が最も欲しい場所に、長短・緩急を使い分けてパスを供給する。
また、後方からパスを引き出す動きも熟知しており、フリーになったり、最終ラインの近くまで降りてきたり、ビルドアップでも欠かせない存在だった。B・フェルナンデス加入後は8勝5分無敗。彼自身もチーム最多の7アシストを記録した。
もし、この男がいなかったら、いまごろユナイテッドは新監督を探していたに違いない。もっとも、明確なゲームプランを持たないオーレ・グンナー・スールシャール監督は、すぐにでもお引き取り願いたいところだが……。
メイソン・グリーンウッドも2019-20シーズンの “ヒット作” である。とにかくシュートがうまい。ペナルティボックス内でも慌てず騒がず、相手GKやDFのポジションをはかりつつ、強弱をつけてシュートを撃つ。
「まるでロビン・ファンペルシーのようだ」
アーセナルで一世を風靡し、ユナイテッドでも3年間プレーしたゴールゲッターにスールシャール監督はなぞらえたが、18歳とは思えないクールな振る舞いは大物の予感を漂わせる。19-20シーズンは10ゴール。期待度特大の若者だ。
さらに、アーロン・ワン=ビサカはスピーディーで粘り強い守りで貢献し、ネマニャ・マティッチとポール・ポグバは最終盤で復活。そしてグリーンウッドの活躍に刺激されたアントニー・マルシャルが17ゴール・6アシスト、マーカス・ラシュフォードも17ゴール・7アシスト。上々の数字でシーズンを終えている。
B・フェルナンデスにおんぶにだっこではあったものの、終わりよければすべてよし。フロントの交渉力、選手個々の能力、チームの完成度など、多くの面でリヴァプールとマンチェスター・シティに劣り、スールシャール監督の力量にも大きな疑問符がつくのだから、3位は及第点といっていいだろう。
ユナイテッド本来の立ち位置からすると悔しすぎるが、受け入れざるをえない厳しい現実である。二強に追いつくためには、さらなる創意工夫が必要だ。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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