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サッカー フットサル コラム 2020年7月29日

【トップ6総括:トッテナム】最低限の仕事だけはした

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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モウリーニョとハリー・ケイン

開幕前からゴタゴタしていた──。

退団するとかしないとか、クリスティアン・エリクセン、トビー・アルデルヴァイレルト、ヤン・フェルトンゲンは立場が定まらなかった。モチベーションを整えピッチに向かっても、多くのサポーターは猜疑心をもってとらえる。

「あいつら、集中できているんだろうな……」

その、ネガティブな感情がブーイングになり、ごくごく普通のプレーでもマイナスに映ってしまう。選手たちは敏感だ。スタジアムの微妙な雰囲気がプレッシャーにつながっていった。

とくにエリクセンだ。ピッチに立ちさえすれば違いを創れるが、チームから心が離れた選手は使いづらい。昨シーズンまでトッテナムを牽引した男は、先発から外れるケースもしばしばあった。

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もっとも、エリクセンひとりの責任ではない。彼は一昨年夏から移籍を希望し、ダニエル・レビー会長も渋々承諾していた。問題は移籍金で折り合わなかったり、余計なオプションをつけてみたり、レビーの駆け引きが過ぎたからだといわれている。欲を出さず、交渉をスムーズに進めていれば、エリクセンの処遇だけは早期解決を図れていたに違いない。

また、マウリシオ・ポチェッティーノとの別れも誤算だった。2014年夏に着任後、2トップから1トップ、4バックから3バックなど、試合の流れに応じた可変システムを導入し、昨シーズンはチャンピオンズリーグ決勝まで導いた。

たしかに、「監督もステップアップを目論むのは当然」との発言は舌禍に等しく、これを契機に主力との溝が生じたともいわれるが、お互いが腹を割って話し合い、ほんの少しでも歩み寄れなかったのだろうか。レビーは仲介できなかったのだろうか、とつくづく思う。

ポチェッティーノの手腕によって名門トッテナムは復活したと断言できるだけに、彼の退団も大きすぎるダメージだった。

さらに、20年1月1日のサウサンプトン戦で、ハリー・ケインが左足ハムストリングを裂傷。長期の戦線離脱を余儀なくされた。エリクセンがインテル・ミラノに去り、ポチェッティーノが退任し、ケインまでOUT。19年11月に新監督に就任したジョゼ・モウリーニョも、V字回復のプランを講じられるはずがなかった。

それでも、ヨーロッパリーグの出場権だけは獲得した。前述した大きすぎるダメージに加え、タンギ・エンドンベレ、ライアン・セセニョンといった新戦力がまったく使えず、デレ・アリも負傷を繰り返していたにもかかわらず、ポチェッティーノ退任時の14位から、最終的には6位にまで戻している。これは地力の高さの証明であり、モウリーニョも最低限の仕事だけはしたといえるだろう。

なお、かつてのキャプテンで、トッテナムのなんたるかを熟知するレドリー・キングが、来シーズンからバックルームスタッフに加わる予定だ。モウリーニョと選手の橋渡し役として、その経験を大いに活用しなくてはならない。

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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