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試合がアディショナルタイムに入ると、今では第4審判が追加時間を掲示する。だが、20年前には追加が何分あるのか、選手も、観客も、実況アナウンサーも、副審も誰も分からないまま試合が続いたのだ。「知っているのは主審のみ」だった。
先日、やはり映像を見返した1978年のアルゼンチン・ワールドカップのブラジル対スウェーデン戦では、試合終了間際にブラジルがCKから決勝ゴールを決めたかに見えたが、CKで蹴られたボールが空中にある間にレフェリーがタイムアップの笛を吹いていたために得点が認められなかったという“事件”まであった。
また、マルチボール・システム採用前の試合ではタッチに蹴り出したボールがなかなか帰ってこなくて試合再開が遅れる場面があって、ついつい苛立ってしまう自分がいた。マルチボールも、残り時間の掲示も、VARも、あるいはバニッシングスプレーも、いずれも試合をスピードアップし、また分かりやすくするための素晴らしい改革だった。昔の試合を見ていると、そんなことに気が付く。
現在のサッカーで最も分かりにくいのは、「主審がアディショナルタイムを何分取るのか」ということだ。追加時間は掲示されるのだが、それを見た時に「なんで、2分しかないの?」とか、逆に「なんで6分も取るんだ!」といった疑問を抱いた経験は誰にでもあるだろう。
ラグビーでは、今では時間はタイムキーパーが管理していて、選手の負傷などで試合が止まるとスタジアムの時計も同時に止まる。だから、時計の針が前後半の40分を指した瞬間に終了のホーンが鳴るのできわめて分かりやすい(ただし、ラグビーの場合はプレーが切れるまでは試合が続くのだが)。いずれは、サッカーでもこういうやり方が採用されるだろう。改革は恐れてはいけない。
20年後に現在の試合を見たとしたら、最も大きな違和感を覚えるのはやっぱり審判関係の部分なのではないか。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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