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ニューカッスルの買収に関して動きがあった。
先週金曜日のコラムでは、『BBC』(英国公共放送)の情報をもとに「女性実業家のアマンダ・ステイプリーが買収」と報じたが、詳細が明らかになってきた。ステイプリーが10%、イギリスの大富豪であるサイモンとデイビッドのルーベン兄弟も10%の株を保有し、残り80%は『サウジラビア公的投資資金』(PIF)のものになるという。
『BBC』によると、『PIF』の総資産は驚異の2508億6000万ポンド(約33兆3600億円)。リーグ・ナンバー1の経済力に支えられるニューカッスルは、今後4~5年で大変貌を遂げるかもしれない。
イングランドの『クロニクル』紙もカネの臭いを敏感にかぎつけ、新生ニューカッスルの補強候補を探っている。
ガレス・ベイル、ハリー・ケイン、クリスチャーノ・ロウンド、ラヒーム・スターリング、ネイマール、そしてリオネル・メッシ! 名前を出せばいいってもんじゃないっ! 彼らビッグネームがニューカッスルにやって来る可能性は、日本の政治家たちが「コロナ禍ですから歳費以外にも削減します」と言い出すのと同様だ。ほぼありえない。
また、『クロニクル』紙が挙げたハメス・ロドリゲス(レアル・マドリー)はエヴァートン移籍が有力視され、クリスタルパレスのウィルフレド・ザハは、今夏こそステップアップを目論んでいる。ニューカッスルは選択肢に入っていない。
『PIF』の買収によって財政が安定し、移籍市場に莫大な額を投下できるとはいえ、ニューカッスルはネームヴァリューを欠いている。ビッグネームが興味を示すようなステイタスを持たず、来シーズンはヨーロッパのコンペティションにも出場できない。
したがって補強戦略は、将来を担う中堅、若手の昇給と、チームの現状に即した即戦力の獲得が軸になる。アカデミーからトップチームに定着したショーンとマシューのロングスタッフ兄弟、リーグ屈指のドリブラーであるアラン・サンマクシマン、名GKマルティン・ドゥブラフカなどを中心に、チーム創りを進めるべきだ。
また、スティーブ・ブルース監督は今シーズン限りで解任だろう。リーグが中断する段階で総得点25は19位タイ。9538本というパス総数は単独19位。世界に打って出ようとしている『PIF』がこのデータを受け入れるとは思えず、攻撃的なゲームプランを練り上げられる新監督を招聘するはずだ。
当然、サム・アラダイスやマーク・ヒューズは論外だ。デイビッド・モイーズを採用すると世間の笑いものになる。マウリシオ・ポチェッティーノやマクシミリアーノ・アッレグリは適任だが、ともにビッグクラブ志向だ。人選は難しい。
しかもコロナ禍で収支改善が求められるため、派手な補強は控えるべきだ。買収直後のニューカッスルが、プレミアリーグの勢力分布図に及ぼす影響は大きくない。しかし、チェルシーもマンチェスター・シティも経済力で現在の地位を築いた。数年後、〈北の名門〉の立ち位置が変わっている可能性は十分にある。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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