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イングランド代表は大幅なプラン変更を余儀なくされそうだ。
現地時間1月1日のサウサンプトン戦で左足ハムストリングに裂傷を負ったハリー・ケインが、リハビリに努めている。
「今シーズン中に3~5試合は出場できるかもしれないが、ケインのキャリアは来シーズン以降もまだまだ続く。いまは焦らずに加療することだ」
ケインが所属するトッテナムのジョゼ・モウリーニョ監督も、慎重な姿勢を崩していないため、このまま今シーズンを終えたとしても不思議ではないだろう。ピッチに戻った途端、痛みを訴えて戦線離脱は最悪のパターンだ。
この2年、ケインはハムストリングの負傷を繰り返してきた。今シーズンは戦列を離れて早2か月が経過し、昨シーズンも10試合欠場。痛みは慢性化し、その原因が疲労である公算が大きくなってきた。イングランド代表のエースであり、キャプテンでもあるが、彼の選手生命を踏まえると6月に迫ったヨーロッパ選手権は自重という選択肢も考えられる。
〈ワンダーボーイ〉と呼ばれ、1990年代後期のイングランド・フットボール界で異彩を放っていたマイケル・オーウェンも、ハムストリングの痛みにつきまとわれたひとりである。
「プレー強度の高いシーンで問題なくても、試合前のジョギングで違和感があったり、急に痛くなったり、いったいどうすれば治るのか、ついに最後まで分からなかった。ケインがわたしと同じ症状でなければいいのだが……」
オーウェンもケインのコンディションを慮っていた。
こうした事情を受け、イングランド代表のガレス・サウスゲイト監督も、ヨーロッパ選手権までに異なる陣形、ケインに代わる選手をテストする必要に迫られている。ラヒム・スターリングに、ジェイドン・サンチョとフィル・フォーデンを組み合わせられないものだろうか。高さには欠けるが、テクニカル、かつスピーディーなトリオだ。
ヨーロッパ選手権予選の4-3-3を踏襲するなら、ジェイミー・ヴァーディ、あるいはダニー・イングスを起用するしか打開策はない。しかし、ケインに近いタイプといえばドミニク・カルヴァート=ルーインだ。技巧と高さを兼備し、ポストワークにもすぐれているため、ヴァーディやイングスより、カルヴァート=ルーインを優先すべきかもしれない。
「大丈夫です、心配ありません。オレ、行きます」
責任感の強いケインはサウスゲイト監督に出場を志願するだろう。ただ、少なくない欠場が続く直近2シーズンを踏まえ、イングランド代表とトッテナムのメディカルスタッフはミーティングを重ね、なおかつ専門医にセカンドオピニオンを求めるべきだ。ケインはイングランド・フットボールの宝だ。まだ26歳。ヨーロッパ選手権を無理強いしていけない。疲労性の負傷が原因でリタイアに追い込まれた場合、いったいだれが責任を取れるのだろうか。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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